びっくりするぐらい社内の雰囲気が変わっていた

実際に時短を解除した女性に話を聞いてみた。営業部門の高井悠紀子さん(07年新卒入社)だ。

(上)東京支社 加工第3グループ 高井悠紀子さん (下)バイオ・ファイン研究所 素材開発研究室 香料品グループ 水津絵子さん

2人の子どもがいて、16年4月に復職している。「どこでもオフィス」のテスト運用が始まったので、時短からフルタイムに戻した。

「『時間有休』、コアタイムなしの『スーパーフレックス』『どこでもオフィス』を活用すれば、時短にする必要がないんです。子どもの発熱で呼び出されたら、以前は半日有休を使っていましたが、今は、子どもの看病をする時間は『時間有休』を使い、その後『どこでもオフィス』で仕事をするといった柔軟な働き方もできるため、精神的なハードルも下がりました」

例えば一日はこんな具合だ。朝5時起きで1時間半ほど集中して仕事。今は営業の総括という仕事なので、数字の分析や企画の時間にあてる。7時半には保育園に子どもを預け、8時半すぎに出社。平均午後5時すぎには会社を出て、子どもを迎えにいく。就寝は10時だ。

「今まではプレゼンに同行してもらおうと各営業が取り合っていた技術担当者も、ウェブ会議システムを使って1日に複数の会議に参加してもらえる。効率が上がっていますね」

化粧品の研究をしている水津絵子さんも2児の母。1人目の出産後も1度復職したが、社内結婚である夫の海外赴任でいったん退社。その後、再雇用制度を使って復職した経験を持つ。

「帰国して復職したら、びっくりするぐらい社内の雰囲気が変わっていました! コアタイムのないフレックスなので、子どもの通院に付き添っても仕事はできますし、突然の発熱でも会議には自宅から出ることもできます。1人目のときも制度はあったんですが、『そこまで無理しなくても』という雰囲気でした」

今の化粧品の研究という仕事が大好きで、続けたいと思っている。しかし以前は諦めることも多かった。

「1人目のときは常に限界を感じていました。例えば育休復帰後は、チャレンジングな仕事ができなくなったりもした。でも、再雇用後は、やめたほうがいいと思った仕事はありません。休んで仕事の流れを止めてしまうより、1日3時間でも4時間でもできると、立て直す時間を考えたらずっと効率がいい。また、『子どもがいるからちょっとこれはやめておこう』ではなくて、『子どもはいるけど、できる?』という感じで、周りも仕事を任せてくれるようになってきた」

会社全体の空気が全く違う。誰もが「効率よく働く」「制度を活用して自分で働き方を選ぶ」ことを考えている。そして、家庭でも諦めないことが増えた。

「生活、変わります。例えば夜の寝かしつけで、バタンキューではなくて、1冊絵本を読んであげられる心の余裕もできました。夫が在宅勤務の日にはたまに食事の支度をしてくれていることがあるのですが、帰ったときにご飯ができあがっている、この感動。人が作ったご飯っておいしいじゃないですか(笑)。人生が豊かになりました。今は欲が出て、与えられたチャンスは全部トライしていきたいというのが目標です」

水津さんは最後にこう言った。

「こんな働き方があったら、もうちょっと若い頃に産んでおけばよかったと思うんです。もう少し若かったら、体力もあって、あともうひと頑張りできたのにって」