「ファッションレンタル」のアイデアは妻が教えてくれた

【田原】3年後、いよいよ起業する。どうしてファッションレンタルだったのですか?

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【天沼】起業にあたって3つのキーワードを決めていました。1つ目は、いまおっしゃったIT。大学からずっとやってきたことなので、最大限に活用しようと思いました。2つ目は、シェアリングエコノミー。シェアは、人と人との信頼関係がなければ成立しない。その概念がすごく好きなんです。そして3つ目は衣食住。ポッと出て流行っては消えていくサービスより、人々の生活に定着してライフスタイルを支援できる事業をしたかった。その条件を満たすものは何かと、コンサルティングファーム時代の仲間2人とディスカッションして、たどりついたのがファッションレンタルでした。

【田原】レンタルできるものはほかにいろいろあります。なぜ洋服?

【天沼】私や共同創業者の奥さんから、洋服と出合う機会がなくなったという話を聞きました。仕事で毎日忙しくて、お店に行く時間もなければ、ファッション誌をめくる時間もないと。子育てが始まると、小さい子どもを抱っこして試着するのは難しいし、そもそも自分の服より先に子どもの服を見に行くようになる。そういった声を聞いて、私たちが洋服を選んでお届けして、自由に試着してもらえるサービスがあれば、もっと洋服に出合っていただけるのではないかと考えました。

【田原】洋服は買うものだというのが常識です。

【天沼】アメリカでは、「レント・ザ・ランウェイ」というドレスのレンタルサービスが09年に始まっていました。レント・ザ・ランウェイは、いまや会員数が800万人を突破。ファッションのシェアがあたりまえの時代になりつつあります。

【田原】買うより借りる時代ですか。

【天沼】誤解していただきたくないのですが、私たちは、「買う」をすべて「借りる」に置き換えるつもりはありません。実際、お届けした洋服が気に入れば、そのまま購入していただくこともできます。ただ、いまは必ずしもみなさんが質の高い出合いをしているわけではない。たとえばインターネットで買ったけれど、サイズがフィットしなかったとか、色みが想像していたのと違うケースもあるはずです。そういう出合いをできるだけなくして、もっと「ワクワクする洋服との出合い体験」をつくっていくことが私たちの目的です。

【田原】エアークローゼットは、いくらで洋服を借りられるのですか。

【天沼】レギュラープランは月額9800円で借り放題。私たちが選んだ洋服を3点、ボックスに入れてお客様の自宅にお届けします。その洋服を好きなだけ楽しんでいただいて、着終わったら返送。また次のボックスをご用意してお届けする流れです。多い方だと月に4~5回はボックスを交換されます。交換は月1回でいいというお客様には、月額6800円のライトプランもあります。