今の日本社会はちょっと窮屈ですね

【塩田】福山さん自身は証券会社のサラリーマンから、なぜ政治家を目指したのですか。

【福山】政治とはまったく縁のない貧乏な家庭に育ちましたが、昔から政治は好き、小学校のときに司馬遼太郎さんの『国盗り物語』を読んで斎藤道三にあこがれました。

私は松下政経塾出身ですが、入塾試験の時は政治家志望ではないんです。だから、自分が政治家をやるとは思っていなかった。ですが、2世や3世、労働組合出身の議員が多い時代に、1992年に細川護煕さん(元首相)の日本新党ができて、日本の政治が変わるかもしれないという流れがあり、前原さん、枝野さん、野田佳彦さん(元首相)らの第1世代の後、私の世代になった。小選挙区制度の下で日本の政治を変えたいという思いがあった。

それと、気候変動や地球温暖化の問題に取り組みたいと思いました。将来のライフスタイルの変化、それに見合った経済のあり方を政治の場で体現したいと思って政治に出た。

95年にマイク1本持って京都の町に立ったのが私の政治活動の始まりです。96年の総選挙に京都1区から出たのが最初ですが、落選。失業保険をもらいながら、事務所も車も電話もファクスも全部、もらい物か借り物でした。2年後、本当に有権者のおかげで勝たせていただいたけど、当選せずにいつの間にか消えてなくなっていた可能性も大きかったと思います。

【塩田】政治家としてこれだけはどうしても達成したいと思っている目標は。

【福山】今の日本社会はちょっと窮屈ですね。何かあればネットで炎上し、ヘイトスピーチみたいなものが横行する。一方で、非正規雇用や低所得者が増えて、中間層がどんどん薄くなり、社会の分断が大きくなっている。こんな天井の低い社会は日本らしくない。私みたいに貧乏で、どこの誰だか分からない人間が、国のために働きたいと思えば、みんなで押し上げてくれるようなおおらかで寛容な社会が日本にはあった。

【塩田】「ジャパニーズ・ドリーム」の復活ですね。

【福山】そうですね。それは経済の場でも政治の場でも一緒だと思う。今の安倍政権の窮屈さ、物言えば唇寒しみたいな自民党です。どっちかに一辺倒みたいな話は安倍政権になってから顕著です。透明な日本にするために立憲民主党が風穴を開けたいと思います。

それから、地球温暖化の問題で、次の世代がどうなるかわからない状況です。間に合わないかもしれないけど、2050年に向けて、われわれの世代で気候変動や地球温暖化の問題に一石を投じて次につなげる仕組みをつくり、足跡を残していきたい。そんなことが新しい政党でやれればと思います。

福山哲郎(ふくやま・てつろう)
立憲民主党幹事長。参議院議員。1962(昭和37)年東京生まれ(現在56歳)。京都府立嵯峨野高校、同志社大学法学部法律学科卒。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。86年に大和証券に入社。90年に松下政経塾に入塾。96年の総選挙に出馬して落選(京都1区。民主党公認)。98年の参院選で初当選(現在、4期目)。旧民主党に入党し、民主党政権誕生後、2009年に鳩山由紀夫内閣の外務副大臣、10年に菅直人内閣の官房副長官となる。野党転落後、民主党の政調会長、民進党の幹事長代理を歴任。17年に立憲民主党に入党して幹事長となる。趣味は茶道、野球、書道。俳優の福山俊朗は弟。著書は『原発危機 官邸からの証言』(ちくま新書)など。
(撮影=尾崎三朗)
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