スマホと違って「逃げ道を塞ぐ」効果がある

電子辞書は、専用機だからこそ学校で使い続けられている。一方、英会話学習機はどうだろう。カシオ計算機が量販店の販売動向などを調べてみると、スマホなどで英会話学習にチャレンジしたけれど挫折した、という人が、同社の英会話学習機を購入するケースが結構あるのだという。

ユーザー本人の意思の問題だろうが、スマホだと簡単に別のアプリに切り替えられるので、うまく集中できないのかも知れない。それに、スマホで人気のアプリは広告付きで無料とか、有料でも数百円といったものがほとんど。スマホではユーザーが学習にお金をかける習慣がないため、本気になりにくいということも考えられる。

専用機は、ちょっと意志の弱いユーザーの「逃げ道を塞ぐ」効果があるということなのだろう。

TOEICや英検という「資格」は英会話学習の大きな動機になる。エクスワードライズがTOEIC受験をターゲットにしたコンテンツを充実させているのもそこにニーズがあるからだ。だが、それだけでは市場は広がらない。カシオ計算機は今回、エクスワードライズとは別ブランドの「joy study(ジョイスタディ)」の新製品も発売している。こちらは電子辞書の機能はなく、日常英会話のリスニングと発音のトレーニングに特化した製品だ。

joy study JY-S01

日常英会話は、誰もが「上達したら良いな」と考えはするものの、動機の強さに欠ける。カシオ計算機もそこに気付いたのだろう。2016年に、旺文社、毎日新聞と組んで、「英語応対能力検定」という新しい資格をつくっている。これは訪日外国人と接する機会の多いサービス業に必要な英会話能力を問うもので、2017年からウェブサイト上でのリスニング、リーディング、スピーキングの試験を行っている。

学習の動機がないなら、「資格」という動機をつくればいい。スマホ時代に「専用機」を売るには、そこまでする必要があるのだろう。なかなかの策士と言えないだろうか。

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