1万人規模のデータベースを構築予定

コンソーシアムでは、今後2年程度をかけて、個人のアンケート情報や毛髪の形態、組成など健康情報を取得し、1万人規模のデータベースを構築する。これから毛髪診断の規準となるここでは理化学研究所が科学ハブとして民間企業群の研究開発に中心的な役割を果たす。辻氏は「1万人分あれば、性別や年齢、地域別などの基本的な属性において、日本人を網羅的に捉えたデータベースとなります」と説明する。

毛髪診断による個人向けのサービスは、まず健康維持に向けたサービスから始まる。毛髪のダメージに代表されるヘアケアの提案をはじめ健康情報の提供、食生活のアドバイス、サプリメントなど機能性食品のアドバイス、生活習慣の改善アドバイスなどが行われる予定だという。参加企業は、それぞれの得意分野で製品やサービスの開発に取り組む。

毛髪の画像診断は、すでに専用の機器の開発が進んでおり、将来はスマホアプリで可能にすることも目指す。毛髪の組成分析についても、コンビニや薬店などに分析装置を設置して5分程度で結果を出すことも技術的には可能性があるという。画像診断の費用は数百円程度、組成分析は数千円程度が目標だという。

さらに5年後までをメドとして、科学的な指標に基づいた疾病の早期診断を、在宅やコンビニなど身近な店舗で可能とするスマート社会の実現を目指している。実現に向けての課題は少なくない。ひとつは治験だ。毛髪診断を医療向け健康診断システムとして実用化するためには、科学的エビデンスに基づいた規制当局の認可が必要となる。認可には大規模な疫学研究による時間が必要であり、さらに社会が毛髪診断を受け入れるかが焦点になる。

毛髪から得られる健康情報による健康維持や未病化、疾患の早期診断によるスマート社会の実現。日本の医療費は増え続けており、国民医療費抑制や社会保障費の充実は日本の未来に関わる大きな課題だ。毛髪診断はその解決策の切り札として日本発の新たな診断システムとしての産業化への期待も高まる。今後の展開に注目が集まる。

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