年金分割の請求期間は、離婚の翌日から2年以内

年金分割は、日本年金機構の年金事務所での手続きが必要です。

まず、「情報通知書」の請求手続きを行います。情報通知書には、婚姻期間中の夫婦それぞれの標準報酬総額などの情報が記載されています。50歳以上で年金受給資格期間を満たしている場合は、年金の見込み額の試算もしてもらえます。情報通知書の請求は、2人一緒に行っても、どちらか一方が行ってもよく、離婚前でも離婚後でも可能です。「もし離婚して年金分割したなら、自分の年金額がいくらになるか知りたい」というときにも、配偶者に知られずに請求できます。

離婚が成立したら、年金分割の請求手続きを行います。合意分割の場合は割合を決めてから、3号分割の場合は合意が必要ないため、妻側の請求だけで手続きが可能です。手続きを行うと、分割割合に基づいて標準報酬が改定され、双方に通知書が送られてきます。

年金分割の請求期間は、離婚の翌日から2年以内です。請求期間について知らない妻に、夫が意図的に教えないケースもあります。また、1度決定した年金分割は、後で変更することはできません。例えば、離婚後に元妻が再婚したり、死亡したりしても、分割した分は戻ってきません。

夫側が、離婚してもできるだけ自分の年金を減らしたくないというのであれば、妻になるべく長い期間、正社員として働いてもらうのが一番よいということになります。なぜなら、自分の標準報酬総額と妻の標準報酬総額の差が少ないほうが、分割によって取られてしまう額が小さくなるからです。

離婚による年金分割の手続きは、それほど複雑ではありませんが、年金分割について相談したいことがある場合には、最寄りの年金事務所に行くのがよいでしょう。みなさんが一番関心を持っているのは、年金の金額だと思います。しかし、年金の計算はかなり複雑ですし、算定のもととなる標準報酬総額といったデータを持っているのは、日本年金機構だけです。年金事務所には相談コーナーなどもあり、年金のシミュレーションもしてくれます。

三戸礼子
特定社会保険労務士
1965年、山口県生まれ。大槻経営労務管理事務所勤務。セミナー講師・執筆など、幅広く社会保険実務に携わる。著書に『介護・福祉・医療サービス事業の人事労務ガイドブック』(共著)など。
(写真=iStock.com)
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