私たちが、「今アガっているな」と認識するのは、自分の心身の状態が普段とは違うことに気づいたときです。

「アガリ=悪いこと」と捉えている人は、アガリを何とか抑えようとします。しかし繰り返しますが、アガリを克服するのは不可能です。しかもアガリというのは、抑えようとすればするほど高まるもの。これでは「緊張10:リラックス0」になってしまいます。

そうではなくて、「今日は大切なプレゼンなんだから、アガるのは当たり前だよな」と考えるようにします。そしてアガっている状態を無理に抑えようとせず、今日のプレゼンテーションに意識を集中させます。すると「緊張6:リラックス4」のほどよい緊張感を作り出すことができ、ベストなパフォーマンスが可能になるのです。

「アガるのは良いことだ」と考えられる人が、アガリを力に変えることができます。

自信がなくても自信ありげに振る舞え

次に2つ目の「自分のプレゼンに自信がない」という悩み。この手の悩みについては、「内心は自信がなくても構いません。でも見た目だけは自信ありげに振る舞ってください」と答えています。つまり「俳優になって演じてください」とアドバイスしているのです。

自信のない人が、自信を持つのは大変なことです。しかし自信がなくても、自信ありげに振る舞うことなら可能なはずです。俳優で言えば、普段は心優しい人でも、お芝居や映画では極悪非道な凶悪犯を演じられるのと同じです。

実はプレゼンテーションでは、最初のうちは少し無理をして自信ありげに演じているつもりが、いつの間にかそれが演技ではなくなって、本心から自信を持って話せるようになっていることがよくあります。私もしばしばそうしたことを経験しています。

社会心理学者のエイミー・カディ氏は講演会「TEDGlobal 2012」で、このことについて「ボディランゲージが人を作る」というテーマで話しています。

彼女は心理学の実験で、あるグループの人たちに、2分間いかにも自信ありそうな力強いポーズをとってもらいました。またもう一つのグループの人たちには、身体を縮み込ませて自信がなさそうなポーズをとってもらいました。そしてそれぞれの被験者の唾液を採取して、ホルモンの変化を分析しました。すると前者の人たちは自信の強さを示す「テストステロン」が増加し、後者の人たちはテストステロンが減り、ストレスの強さを示す「コルチゾール」が増加したのです。

つまり内心では自信がなくても、自信ありげに振る舞っていると、脳が「自分は自信があるんだ」と判断し、本当に自信がみなぎってくるようになるわけです。