三つ目の政策が「国内親日派」の断罪です。北朝鮮では「日本統治時代に親日行為(日本統治への協力)をした者」は、悪逆な犯罪者・売国奴として粛清されました。これを評価する盧武鉉は、これまでの韓国は「国内親日派」を温存してきたと批判し、北朝鮮と同じく「日本統治時代に親日行為をした者」を断罪すべきだとしたのです。そのために特別法を制定して「親日反民族行為者」(故人を含む)のリストを作成・公表し、彼らを公式の「売国奴」としました。また、多数の「親日反民族行為者とその子孫」の財産が、国家の手によって没収されています。

教科書も憲法も「北朝鮮化」を狙う文在寅

こうした盧武鉉政権の「対北融和・南北連合国家形成」の政治方針を文在寅政権は継承し、「韓国の北朝鮮化」を推し進める政策をいま、次々に打ち出しています。

例えば、2020年から中学・高校で使用される歴史教科書について、「北朝鮮による6・25(朝鮮戦争)南侵」「北朝鮮の世襲体制」「北朝鮮の人権」などの用語をすべて用いないとする執筆基準試案を提示しています。これは盧武鉉政権すら行わなかったことです。

さらに、文在寅政権を支える与党「共に民主党」は、大韓民国憲法にある「自由民主的基本秩序」の文言から「自由」を削除する憲法改正案を議員総会に提出しました。野党の大反対にあっていくらか引っ込めてはいますが、これまでの韓国では「自由民主的基本秩序」とは、北朝鮮のような「一党独裁体制」の否定を意味するとしてきたのです。

この憲法改正案では、自由市場経済に反して国家的な経済統制を強化する条項など、国家社会主義的な思想が露骨に示されています。文在寅政権は、南北連合国家の形成へ向けて、韓国をできるかぎり北朝鮮に近い体制へ変えようとしているといえるのではないでしょうか。

呉 善花(オ・ソンファ)
拓殖大学教授
1956年、韓国・済州島に生まれる。83年に来日し、大東文化大学卒業後、東京外国語大学地域研究科修士課程(北米地域研究)修了。現在、拓殖大学国際学部教授。デビュー作『スカートの風』(角川文庫)で注目を集め、『攘夷の韓国 開国の日本』(文春文庫、第5回山本七平賞受賞)、『朴槿恵の真実』(文春新書)ほか、著書多数。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
なぜ韓国の大統領は北朝鮮に"弱腰"なのか
平昌五輪で見えた"北主導"統一のシナリオ
絶対に笑ってはいけない平昌オリンピック
それでも韓国が北朝鮮に甘い顔をする理由
日本の"甘い顔"が韓国の"身勝手"を育てた