経営者として、大切にしていること

私が理想とする経営者としての生き方は、「独立不羈」(どくりつふき)である。ほかの何にも影響されず、自ら考えて行動すること。これに尽きる。多くの経営者を見てきたが、独立心があり、自分で人生を切り開いた人だけが大きな成功をしている。「自分にできないことなどない」という気概が必要だ。社員には「私にできないのは、時間を戻すことと亡くなった人を生き返られることだけだ」と宣言しているほどだ。

そして、経営者にとっての生命線は「情熱の継続」だと思う。私に促されて事業承継を決めた親父に、当時の公認会計士がこう言った。

「会社を譲るということは、後継者が会社を潰そうが、成長させようがすべてを任せるということです。その覚悟はありますか」

親父が覚悟を決めて経営権を渡したのは、私の能力を認めたからではない。私の会社に対する情熱が、親父のそれを超えたと悟ったからだ。代表権は、私一本でスタートした。

社長になって以降、会社では、何をやっても私が一番だった。でも、今は違う。それぞれの分野で私より優れた社員が出てきた。私が誰にも負けないのは、情熱だけになった。私を越える情熱を持った人間が出てきたら、それが次の経営者だろう。

会社は祭りのようなものだ

最近では、会社は祭りのようなものだと思い始めた。祭りにはいろいろな人が関わる。みこしの上で跳ねる人だけでなく、担ぐ人、作る人も必要だ。露店を営む人、片づけをする人など、すべてがそろって、やっと祭りになる。何か一つかけても、祭りにならない。中小企業は人材が豊富なわけではない。そのなかで、どうやって祭りをうまく作り上げるか。盛り上げるか。適材適所をいつも考えている。

もし、私が目標半ばで交代したとしても、後継者がその目標を引き継ぎ、いつか最高の祭りを開いてくれる。そう考えると、会社というのは、とても素敵なものだ。

(構成=荒川 龍 撮影=小川 聡)