「NB」は世界の主要マラソン大会の公式スポンサーに

別注シューズを作るとき、三村さんはまず選手たちの「足」を測定するという。足の大きさ、力のかかり方などから、どんなシューズがフィットするのかを予測。独自の感覚が、選手たちに信頼されている。足の測定は一度だけでなく、定期的に行うことで、選手たちの“状態”を見抜くことができるというから、まさに職人技だ。

三村氏が主宰する「ミムラボ」とグローバルパートナーシップを締結したニューバランス。

「コンピューターが発達しても、デザインや素材で、同サイズのシューズでも大きさは微妙に変わってきます。そこら辺をどう調整していくのか。私の場合はトップ選手を主体にやりますけど、市販向けのシューズでもフィティングなどでうまく対応していきたいと思っています」

三村さんが長年、培ってきた別注シューズでのノウハウを、市販品にどう生かすのか。三村案が反映された新シューズは、来冬に登場予定。国内だけでなく、グローバル展開されることになる。NBは、2016年から「ニューヨークシティマラソン」、2018年からは「ロンドンマラソン」のオフィシャルスポンサーを務めるなど、世界のメジャーレースでブランドPRに力を注いできた。国内に目を向けると、「名古屋ウィメンズマラソン」のシルバースポンサーの座をナイキから奪った。

▼ナイキ帝国をNBは切り崩せるのか

一方のナイキは大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)、設楽悠太(ホンダ)という日本のトップランナーから、ネクストエイジともいうべき關颯人、鬼塚翔太(ともに東海大)らとも契約。シューズやウエアの提供だけでなく、金銭的にもサポートしている。

ナイキが提供するシューズは、基本的に市販されているものと同じで、足型もとっていない。「トップ選手と同じシューズ」というのは、セールスの売りになるだろう。そして、2月22日には新感覚クッションを搭載した「エピック リアクト フライニット」というモデルを発売する。

ナイキとNB。両ブランドの争いは、「工業製品vs職人技」の戦いといえるかもしれない。

2月25日の「東京マラソン」ではナイキのシューズを履いた設楽悠太が2時間6分11秒の日本記録を樹立した。NB勢の成績は奮わなかったが、出場していない今井正人(トヨタ自動車九州)ら“NBランナー”も黙っていないだろう。

また、1月28日の「大阪国際女子マラソン」で初マラソンに挑み日本歴代9位の2時間22分44秒で優勝を飾った松田瑞生(ダイハツ)は前出・三村氏の会社「ミムラボ」製のシューズを履いていた。この松田もNBに“モデルチェンジ”する可能性が高い。

タイムを狙うコア層のランナーは、エリート選手が履くシューズに熱い視線を注いでおり、トップランナーの活躍でシューズの勢力図は大きく変わる。今後もランナーたちの“足元の戦い”から目が離せない。

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