金メダルランナーの靴を手掛けた「職人」を引き抜いた

これまで国内トップランナーとほとんど契約していなかったNBだが、元日に行われた全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)でもNBのシューズを履く選手が急増。連覇を果たした旭化成の市田兄弟(孝、宏)、マラソンで2時間7分39秒の自己ベストを持つ今井正人(トヨタ自動車九州)、青山学院大学時代に「山の神」と呼ばれた神野大地(コニカミノルタ)らがNBで疾走した。

今、名前をあげたすべての選手は昨年まで主にアディダスを履いていたが、三村さんについていくかたちで、シューズメーカーを変更している。NBにとって三村さんの参画は「技術力」を獲得しただけでなく、トップ選手による「PR力」の面でも大きくプラスに作用したことになる。

1月中旬に開かれた『ニューバランス 新戦略発表会』に臨む三村氏は「NB」の黒のスニーカーだった。

1月中旬に行われた『ニューバランス 新戦略発表会』では、「選手とともに世界と対峙していくという目標にチャレンジしていきたい。やりたいことができる場所です」と三村さんは新たな挑戦に目を輝かせていた。

瀬古利彦、高橋尚子、野口みずきら世界のトップに君臨したランナーたちのシューズを手掛けてきただけに、NBの製品を「まだまだ改良の余地は多い」と断言。新シューズの開発については、「特にフィティングとクッション性ですね。疲れにくく、故障しにくいようなシューズを作っていきたい」と意気込んだ。

▼ナイキの「ヴェイパーフライ4%」に、三村氏は「反対」

一方で、今年の箱根駅伝ではナイキも大躍進している。

出場選手の内訳では、アシックスを抜いて、トップを奪取。世界のマラソン界を席巻している厚底シューズ、「ヴェイパーフライ4%」を履いた選手が40名近くもいたのだ。そこで三村さんに、ヴェイパーフライ4%についての印象を聞くと、「ハッキリ言って厚底には反対ですね」と口にした。

「ナイキさんが研究されたシューズやから、ええと思いますよ。ただ10人いたら10人とも『いい』というわけではないと思います。一番懸念しているのはクッション性がそんなにあって走れるのかということです。(走る者にとって)感覚的にはクッションがあったほうがいいんですけど、足の力が路面に伝わりにくい。クッションがありすぎるとそれだけ力がかかりますから、早く疲れるんです。個人的には爪先にクッションがあるような発想はしたくないですね。足首を痛める恐れがあるからです。でも、足首が固い選手はクッション性があった方が走りやすいので、そういう選手はいいと思いますけど、10人に1~2人ぐらいじゃないでしょうか」

三村さんは「厚すぎてもダメだし、薄すぎてもダメ」という。

「瀬古、宗兄弟(茂、猛)、中山(竹通)、谷口(浩美)らのシューズも作ってきましたけど、あの当時と比べたら、いま私が作っているシューズは1~2mm厚いです。(昨今の選手の)筋力不足という理由もあるでしょう。でも、クッション性があったら速く走れるかというと、そういうわけではないと思いますよ。自分の足の力が路面にどれぐらい伝わっているのか。それが大切になってくる。だから、厚すぎてもダメだし、薄すぎてもダメ。その選手の足の形態、アライメントに合ったシューズを履くことが重要になってきます」