心をつかむためには、今の中国社会への理解が不可欠

――なるほど。ここは非常に重要な視点だと思います。先ほどの旅館の話に戻ると、ご著書の中で「たくさんのお金を払ったのだから、特別扱いされて当然だ」という中国人の声があり、たくさん払った人も、少ししか払わなかった人も、同じように大切に扱う日本のサービスを、少し不満に感じてしまうことがある、ということが書かれていました。

はい。そういうと誤解されるかもしれませんが、少ししか払わない人も大切にするのが、日本人のいいところ、美質であると思っています。でも、たくさん払った人には、ほんの少しサービスを上乗せするとか、もうちょっと工夫があったら、もっといいかな。そうでないと、逆に彼らに不公平感を与えてしまいます。彼らの心をつかむためには、今の中国社会への理解が不可欠だと思います。

――その通りですね。中国ではサービスは目に見える、わかりやすいものが多いですね。病院のVIP外来などはそのひとつ。たくさんお金を出したら、特別に早く、丁寧に診察してもらえますね。中国はとにかく人口が多いし、平等に扱われていたら、順番がくるまでにものすごく時間がかかってしまいます。

日本はそこまでの競争社会ではないので、とくにお客さまに対しては、何でも平等、公平というところでもあるかと思いますが、日本人がよかれと思って行った「おもてなし」が相手に通じなかったり、理解されなかったりする、というのは残念なことです。

要は、相手がどのような社会環境で暮らし、どういうふうに考えているのか。まず相手の状況を理解し、相手の考え方をリスペクトすることが、とても大切なことだと感じています。

おっしゃる通りだと思います。中島さんがいつも日本人の立場で本に書かれていることと、私が中国人として今回書いたことには、非常に共通点が多いと思います。

――私はいつも、「一口に“中国人”といっても、実にさまざまな人がいる」ということを書き続けてきました。中国はもともと懐が大きく、多様性のある国ですが、近年は都市部のプチ富裕層を中心に、成熟化、個性化が進み、変化のスピードは目を見張るものがあります。そこに、なかなか日本人の認識がついていけない面もありますが、日本のよさをもっと中国人に知ってほしいし、日本人も、今の中国がどうなっているのか、興味を持ってほしいと思っています。

同感です。私も、中国にはさまざまな人がいることを、もっと知ってほしいと思います。インバウンド関係者だけでなく、中国ビジネスや、異文化にかかわる人々にも、最近の中国人の変化を知っていただけたら、うれしく思います。

(写真=iStock.com)
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