(6)御用聞き営業を廃止する

顧客の声を鵜呑みにすることも多品種化の原因の1つである。営業は、顧客接点であるからこそ、顧客の声に出した要望ではなく、真に何を欲しているかを探るのが仕事である。御用聞き営業からひと時も早く決別する必要がある。

取り扱い品種が少なくなれば、営業は難しくなる。換言すれば、品種を絞り込む提案に、営業は反対するだろう。「競合企業に棚を明け渡す」ことになるからである。しかし、利益貢献がほとんどない少量生産品を廃番にすれば、間違いなく収益性は向上する。棚を競合企業に奪われても、そこに並ぶのは、他社の少量生産品であり、それらは、競合企業の収益性を悪化させるものばかりである。品種を減らす効果は極めて大きい。

多品種化にはメリットはない。このことを肝に銘じて経営に取り組むだけで企業の収益性は驚くほど向上する。開発者は、本気で業務に取り組むようになる。営業は、少数の自慢の製品を顧客に販売することに努力するようになる。品種の絞り込みは、従業員のレベルアップにも貢献するのである。

加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
神戸大学名誉教授、博士(経営学)。1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。
(写真=iStock.com)
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