だが、相手が傷つけたことを認めず、修復しようともしなければ、傷ついたあなたにどうやって心の平和を見つけることができるだろう? その答えは、その課題が手ごわく感じられるのと同じくらいに単純だ。“何でもできることをすればいい”のだ。

怒りや恨みにはまり込む必要はない

カトリーナにとって“できること”は、それまでどおりの生活を崩さずに続けることだった。毎日服を着替え、仕事に出かけ、娘の世話をする。彼女が経験した裏切りの大きさを思えば、ひどく疲れ切っていたはずだが、生活リズムだけは、そこに振り回されずにいたのだ。3~4年後、ずっとよくなったカトリーナは「このことが助けになった」と話してくれた。

ハリエット・レーナー(著)、吉井智津(翻訳)『こじれた仲の処方箋』(東洋館出版社)

あなたの元夫(あるいはお母さん、もしくはほかの誰でも)にされたことをいつまでもぐるぐると考え続けてしまい、そのプロセスによってみじめな気持ちになっているあいだにも、あなたを傷つけた相手は、ビーチで素晴らしい1日を過ごしているかもしれない。それならば、あなただって手近な方法で、いくらかでも心の平和を求めてもいいはずだ。

難しいのは、それには謝らない相手はこれからも謝らないし、自分自身を客観的に見ることもなければ、ほんの少しでも心を開いて、こちらの気持ちに耳を傾けようとすることもないことを受け入れることが求められるということだ。怒りや憎しみを手放すには、過去が違うものであればよかったという希望を、夢見ている未来への希望とともにあきらめることが要求される。私たちが得ることができるのは、いまここにある現在の人生であり、そこでは自分のためにならない長引く怒りや恨みにはまり込む必要はない。

ハリエット・レーナー
心理学者。女性と家族関係の心理学を専門とする、米国内でもっとも愛され、尊敬を集める人間関係のエキスパート。心理学者として20年以上にわたりメニンガー・クリニックに勤務し、現在は、個人で開業している。ニューヨークタイムズ・ベストセラーとなった『The Dance of Anger』(邦訳『怒りのダンス』誠信書房)をはじめとする著書は、世界で300万部以上売り上げている。夫とともにカンザス州ローレンス在住。大きくなった2人の息子がいる。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
デキる人は「瞑想」で自己肯定力を上げる
許せない相手を許す「仏教3.0」の智慧
小心者が変身"はがねのメンタル"の鍛え方
キレる人を落ち着かせる"アドラー心理学"
"持論"を押し付けてくる精神科医は要注意