この失敗から学び、私は「やらないこと」を決めました。

今はもう「一度売ったらそれでおしまい」というビジネスにも、「ライバルのいないビジネス」にも手を出しません。武蔵野は、「同じお客様に、同じ商品を、定期的に、繰り返し売るビジネス」にリソースを集中させて成功しているのです。

鉄砲ではなく、弾を売るビジネスを目指す

ビジネスモデルには、大きく分けて2つあります。「鉄砲」を売るビジネスモデルと、「弾」を売るビジネスモデルです。「鉄砲」は、一度手に入れたら、通常はしばらく購入しません。2丁め以降を買うのは、持っている商品が劣化したときや、新機能のモデルが欲しくなったときの買い替えです。単価は高いが、次の購買につながりにくい。したがって、常に新規顧客を獲得しなければなりません。

一方で、「弾」は消耗品です。鉄砲を買った人は必ず弾を使い、鉄砲を利用し続ける限り、補充します。したがって、弾を扱うビジネスは、同じお客様に、同じ商品を、定期的に、繰り返し販売することができます。「鉄砲は売らない、弾を売る」が、利益の安定するビジネスモデルと言えます。

儲かるしくみをつくりたいなら、はじめにテリトリーを絞り込んで(やらないことを決めて)、メインの事業を明確にしたほうが得策です。

自分の身の丈を考えて「やらないこと」を決めると、むやみに事業の間口を広げることがなくなります。そして、自社の強みを生かした仕事ができるようになります。

他社の真似ができない。お客様とライバルに学ぶことができない。やりたいことを優先している……。業績を出せない“ヤバイ会社経営”にみられる傾向は、プライドが高く独創性を叫ぶばかりのこんな社長がいることなのです。

小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野社長 1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー(現在の武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に武蔵野に復帰。1989年より社長に就任し、現在に至る。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(すべてKADOKAWA)などがある。
(写真=iStock.com)
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