仮想通貨の値動きのメカニズムは株価と違う

それでは、なぜ米国の株価はここにきて大幅な反落したのでしょうか。最大の原因は「長期金利の上昇」です。

リーマンショックの傷も癒えた米国では、中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利(短期金利)を順次上昇させています。2014年にはほぼゼロでしたが、直近では1.25~1.50%の間に誘導しています。

写真=iStock.com/tsvibrav

さらには、市場に大量の資金を供給していた「量的緩和」政策をやめ、昨年から供給量を削減し、市場から資金を吸い上げ始めています。

政策金利の上昇、市場への資金供給量の削減。これらのことが徐々に市場に影響を与え始め、今年の1月後半あたりから長期金利が上昇をはじめたのです。長年「2.6%の壁」と呼ばれる見えない壁があったのですが、一気にそれを超え3%に迫るところまできています。

この長期金利上昇の背景には、景気の比較的順調な拡大だけでなく、トランプ大統領が打ち出した大幅減税が企業業績をさらに拡大するとの投資家関係者の思惑が重なったこと、また、財政赤字が拡大することなどが金利上昇トレンドを形成していると考えられています。

ところがその半面、急ピッチな長期金利上昇は企業収益に今後マイナスの影響を与えるのではないかという懸念が生じるとともに、最近までの株価の急ピッチな上昇への反動もあり、2月に入って大幅な株価調整の局面となったのです。

とはいえ、米国経済は堅調です。長期金利の上昇も、その景気の堅調さを背景としたものですから、少し長い目で見た場合には、株価の値動きは安定化してくるのではないかと私は考えています。リーマンショック後9年近くも景気が拡大しているので、景気後退の時期が来てもおかしくありませんが、しばらくは堅調な経済が続くと思います。もちろん、株価下落が個人消費などの実体経済に与える影響もありますから、今後の個人消費や企業業績の動向チェックを怠ってはなりません。

▼仮想通貨は国家の「裏付け」がない

仮想通貨も昨年末にかけては大幅に価格が上昇しましたが、前述したように年初以降、急激に調整色が強まりました。また、仮想通貨交換会社のコインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出するという事件もあり、さらなる下落に拍車をかけました。

しかし、この価格下落は、株価の下落とは本質的な原因が違うと私は考えています。そのことを理解するには、仮想通貨と「法定通貨」の違いを理解しておく必要があります。

米ドルや日本円、人民元などの法定通貨の「相場」が上下する理由は何でしょうか。直接の理由は「需給」です。買う人が多ければ値段が上がり、売る人が多くなれば下落するということです。上下する理由に関しては、株式も為替相場も仮想通貨も同じなのです。

ただし、法定通貨の場合には背景があります。投資家など市場関係者による思惑ももちろんありますが、その国の「政治・経済」という大きな背景があります。これが「ファンダメンタルズ」と呼ばれるものです。

たとえば、資源価格が上がれば豪州ドルやブラジルレアルは上昇傾向となります。資源国特有のファンダメンタルズがあるがゆえにその“恩恵”を受けるのです。また、経済力のない国では自国通貨よりも米ドルやユーロの保有が好まれますが、それもそれらの国々のファンダメンタルズが弱いことに起因しています。

もうひとつ、法定通貨が仮想通貨と違うのは、法定通貨では中央銀行のバランスシートにおける「負債」として計上されていることです。これは簡単に言えば、国家の裏付けがあり、その国の信用でその通貨が成り立っているということを意味します。だから、各国のファンダメンタルズが問題になるとも言えます。