「時間稼ぎ」で「挑発招くだけ」

そのうえで次のように主張する。

「どんな内容、規模であれ、平和の祭典である五輪直前に、すぐ近くで軍事力を誇示する行動に出るのは、適切でない。北朝鮮へ不信感を増幅させる、『マイナス効果』しかないことを知るべきだ」

「適切でない」どころか、気が違っているとしか思えない。「マイナス効果」というより、国際社会に尻を向けた自爆行為である。

きっと東京社説もそこまで書きたかったのだと思う。それができなかったのは、社説だからだ。社説はその新聞社の意見となる。それゆえ社説で使われる表現は第一に気品が重視される。

この沙鴎一歩も10年以上、新聞社の論説委員として社説を書いてきただけにそれはよく分かる。

目的は北朝鮮内の反対勢力への牽制か

さらに東京社説はこうも指摘する。

「一方、北朝鮮の突然の融和姿勢は、核・ミサイル開発を進めるための時間稼ぎだとして、譲歩を重ねる韓国政府の対応を疑問視する声も根強かった」
「開会式に出席するペンス米副大統領も、『北朝鮮への妥協は挑発を招くだけだ』と語り、警戒を緩めないよう呼びかけた」
「残念ながら、北朝鮮の軍事パレードは、そういう疑念をさらに募らせることになった」

その通りだ。疑念を抱かせる行いだと北朝鮮も分かっているはずだ。それなのに北朝鮮はなぜゆえ、この時期に軍事パレードを行ったのか。

このへんのところを東京新聞はこう指摘する。

「パレードは海外メディアが訪朝取材する予定だったが、急きょ中止となった。北朝鮮の公式メディアでも、生中継されなかった」
「あくまで国内向けのイベントと装い、批判をかわす狙いだろうが、なぜ中止できなかったのか」

しかし、沙鴎一歩は東京新聞とは違った見方をしている。

おそらく北朝鮮国内には、平昌五輪の参加に反対する勢力が存在するのだろう。その勢力を黙らせ、国民をひとつにまとめる上げるために、アメリカを強く意識させる軍事パレードを実施したのだと思う。今後、北朝鮮はどう動くのか。どこまでも目が離せない。

(写真=AFP/時事)
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