歴史は常に、ウソで動いていく

大久保利通 
偽造した「錦の御旗」で旧幕府軍を欺く●旧幕府軍が恐れた錦の御旗は、実は大久保と長州の品川弥二郎が「こんなものだろう」と偽造したもの。(時事通信フォト=写真)

これ以外にも、「討幕は毛頭考えていない」と薩摩藩内を説得して鳥羽・伏見に兵を出した島津久光、藩は残すと殿様に約束しながら廃藩置県を断行した西郷と大久保など、維新の立役者たちがついた、さまざまなウソが残っています。

最近、薩長が政権を取らずに、もう少しましなやり方で明治維新が行われたら、日本はもっと豊かな国になった、あるいは軍国主義に行かなかったという議論が出ています。でも、それは結果論にすぎません。斉彬も久光も、西郷も大久保も、明日どうなるかわからない状況下で自らが最善と考える選択をし、結果としてウソが生じてしまったのです。

自分の利益をはかるためだけのウソ、相手を傷つけるためのウソは論外ですが、私利私欲でない信念、西郷が言う「至誠」の気持ちを胸に、確たる目的意識をもってつくウソは許される、と私は思います。明治維新に限らず、歴史は常にそうしたウソで動いていくものだからです。

加来耕三
歴史家・作家
1958年10月、大阪市生まれ。奈良大学文学部史学科卒。奈良大学文学部研究員を経て、大学・企業の講師をつとめながら著作活動を行う。著書に『幕末維新 まさかの深層―明治維新一五〇年は日本を救ったのか』(さくら舎)、『西郷隆盛100の言葉』(潮新書)など。テレビ・ラジオ等の番組監修も多数。