自動車や電機など完成品を販売しているメーカーは軒並み最高益を更新している。だが完成品の部品をつくっている中小のサプライヤーは苦しい状況が続いている。日本のサプライヤーは、原価低減を進めるほど販売価格が下がるという状況にある。どこに問題があるのか。同志社大学大学院の加登豊教授が分析する――。

原価低減活動の3つの結末

今回の「一穴」=原価低減は利益獲得に貢献すると考えている

懸命に原価低減に取り組んでいる。原価も確実に下がっている。それなのに、利益向上(税引き前利益)には結びついていない。これが、日本企業の現状である。でも、この問題を解決しようする動きは少なく、目先の原価低減活動に終始している。現状を「仕方ない」ですませてはいけない。事態は相当に複雑で深刻であり、問題の解決は一企業だけでは達成できない。産業界あげての取り組みが必須である。

原価低減活動に取り組んだ結果は、以下のいずれかになる。

・原価が下がり、会社全体の収益性が改善された
・原価は下がったが、会社全体の収益性はそれほど改善されない、あるいは、悪化している
・原価は下がらなかった

写真=iStock.com/Sean_Kuma

原価が下がり、会社全体の収益性が改善されるなら特に大きな問題はない。原価低減活動が功を奏しているからである。しかし、大部分の企業では原価低減に相当程度成功しているにもかかわらず、会社全体の収益性は向上せず、場合によっては、収益性が悪化している。また、まっとうな方法で原価低減活動に取り組んでいるにもかかわらず、極限までの原価低減が実現しているため、それ以上の削減の余地のない企業もある。

これらのうちで、今回は、原価は下がったが、会社全体の収益性はそれほど改善されない、あるいは、悪化している理由を考えて見たい。