それと同じで、人も「これ、お願い」と頼まれた仕事があれば、「よし、やろう」と反応するのが自然です。そして、その本能をコントロールするのが理性です。

ですから、仕事を頼まれたときに、そこでひと呼吸おいて「考える」という理性の行為は、自分で意識的にやらないとできないことなのです。

「速くやる」ための方法を編み出す3原則

「そうか、動く前に考えればいいんだ!」と理解しても、実際に難しい問題を目の前にしたときに、何をどう考えればいいのかわからない人も多いでしょう。

というのも、世の中には「どう手を動かすか」という作業マニュアルはありふれていますが、「頭の中でどう考えるか」という思考法についてはあまり言及されてこなかったからです。

私は、「最速」でゴールにたどり着くために、いつも次の3つの原則を意識しています。

[原則(1)]考える枠を決める
[原則(2)]全体像を捉える
[原則(3)]ムダに考えない
[原則(1)]考える枠を決める

ゼロから何かを考え出そうとするのは、どんな人でも難しいものです。

「真っ白の紙に、好きなように絵を描いてください」と言われると、何を描こうか、どこから描き始めようかと戸惑ってしまいますよね。

仕事でも、「さあ考えよう」と白紙から考え始めると、「何を考えるべきか」「何から考えるべきか」はなかなか浮かんできません。

白紙のゼロベースではなく、考えるべき「枠」を作ることで、誰でもその「枠の中」に集中して考えることができるようになります。「いま何を考えればいいか」がシンプルかつクリアになるので、戸惑うことがなくなるのです。

例えば私は、トラブルに遭遇したときはもちろん、報告資料を作るとき、プレゼン資料を作るとき、文章を書くときなど、何かをするときには常に「枠」から考え始めることにしています。

[原則(2)]全体像を捉える

私が書籍1冊分の原稿を書くときには、文章をパソコンに打ち込む前に、まず、「章立て」や「見出し」といった書籍全体の枠組みや構成を作ります。文章を書くよりも、全体像を捉えることに大きな労力を割いているのです。

いったん、そうした枠組み(全体像)ができあがると、その後は、枠の中に文章を入れていけばいいので、あまり考え込むことがなく、スラスラ書き進めていくことが可能です。

ところが、そうした枠組みを持たず、いきなり書籍の1ページ目から書き出そうとしても、まず、筆は進みません。どうにか最終ページに至ったとしても、モレやヌケがあったり、くどい部分が出てきたり、あちこちがチグハグで全体のバランスも悪いものができあがってしまう可能性が高くなります。