路上ライブを、オンラインで再現

【田原】でも、帰国後は起業ではなくディー・エヌ・エーに転職する。

【前田】南場に起業の相談をしたら、いま会社を立ち上げても、成功する確率は低いと言われました。南場はマッキンゼーの出身。「コンサルや投資銀行の仕事は虚業。そこで結果を出している人を集めて起業したけど、黒字になるまで4年かかった。起業するなら、実業に必要な力をうちで修業してからでもいいのでは」とアドバイスを受けて、それもそうだなと納得しました。

【田原】ディー・エヌ・エーで、まず新規事業としてSHOWROOMを立ち上げる。中国のライブ動画配信サイトYY直播(ワイワイ・ジーボー)からヒントを得たそうですが、どんなサービスですか。

【前田】ライブストリーミングサービスです。演者が配信して、ユーザーがそれに反応する。

【田原】ユーチューバーとは違う?

【前田】ユーチューバーは編集した動画をアップロードして、それらの動画が何回再生されるかを競いますよね。そこにリアルタイム性はなく、原則、オンデマンドです。それに対して、ライブ配信は発信者とファンが同じ時間を共有して、リアルタイムに双方向にやりとりします。たとえばYYでは、演者の女の子の気を引くために、バーチャルの車に乗って入室するユーザーもいました。300万円もするポルシェに乗って登場するもんだから、女の子が「すごい」と関心を持ってくれる。

【田原】え、300万円? 本物の車じゃないんでしょう?

【前田】じつは僕も中国に行ってYYのユーザーにインタビューしたとき、同じ質問をしました。すると、「本物のポルシェを買ったとしても、現実世界で隣に乗せたい子がいないから」と。

【田原】すごい世界だね。そのYYを見て、SHOWROOMをつくったわけね。

【前田】はい。YYを見たら、かつて自分がやっていた弾き語りと共通点を感じました。弾き語りではお客さんは僕との関係性にお金を払ってくれました。ライブ配信も同じ。女の子の歌がうまいからではなく、人と人の絆があるからギフト(演者にオンラインで課金する仕組み)を飛ばす。半分以上直感でしたが、これはすごいビジネスになる、日本でも市場はあると思って事業化しました。

【田原】具体的に事業化はどこから始めましたか?

【前田】仲間集めです。僕はコードを書けないので、いまCTOを務めている佐々木康伸を誘いました。あとほかの仕事もしているデザイナーに手伝ってもらって、3人でスタートです。

【田原】演者はどうやって集めた?

【前田】最初はアイドルグループに特化していたので、ライブハウスに通って、いわゆる“地下アイドル”に営業です。

【田原】演者に出演料は出るんですか。

【前田】保証されているギャラはないです。ユーザーからのギフティングの収益が分配される仕組みにしています。加えてファンが増えるというプロモーションのメリットも訴求していました。