魅力的なスピーチは3部構成になっている

3、落語にならって、スピーチを3部構成にする

落語ではいきなり本題に入らず、まず世間話や本題と関連する小咄(こばなし)をする。これを「マクラ」と呼ぶ。そして「本題」に入り、本題の最後に「落ち(サゲ)」が来る。落語を参考にして、スピーチも3部構成で組み立てると、魅力的になる。

3-1、オープニング(マクラ)

スピーチが印象に残るかどうかは、冒頭の話の内容で決まる。スピーチの達人とされる小泉進次郎氏は、ある講演会の冒頭でこう切り出した。

「民主党へ政権が交代した選挙で、初当選したときのことです。当時、世襲した政治家への風当たりが相当強く、自民党への失望感とも重なって、演説しても話を聞いてもらえなかった。自分の名刺を破られ、演説する横で太鼓を叩かれ、わざと足も踏まれた」

小泉氏が昔を振り返り、こんな苦労話を明るく話し始めると、聴衆は瞬時に話に引き込まれた。

聴衆に共感してもらい、関心をひきつけるには、自身の失敗談や経験談が何より効果的だ。自分が犯した失敗談や上手くいかなかった体験談は、聴衆自身も経験があるから共感される。

大ヒットした曲の歌詞を思い出して欲しい。「私はイケメンと付き合っているの、いいでしょ」などという詩は絶対に登場しない。自慢ネタは共感されず、逆に嫉妬や妬みを買うからだ。「何をしていても、どこへ行っても、いるはずのないそのヒトの姿を探してしまう」といった痛みが歌われるから、人は共感する。自身が経験した心の痛みを、共有できるからだ。

もう一つ避けたいのは、使い古され、訳知り顔に思われやすい、「グローバル」「ボーダレス」「ネットワーク」といったカタカナ言葉をつかうことだ。本論を話す前に、聴衆にありきたりな内容だと誤解されてしまう恐れがある。

3-2、本論(スピーチで最も伝えたい内容)

スピーチで選んだテーマについて語るのが本論だ。最も伝えたい内容を、ここで話すことになる。伝えたい内容が複数あるときは、前もって「今日みなさんにお話したいことが、3つあります」といくつ話すかを前もって伝えておく。こうすれば、聴衆は話が3つあることが先にわかるので、集中力を維持できる。3つの話には、それぞれタイトルをつけ、順に説明していく。

話したい内容が3つ以上あったら、内容を絞り込んでよりシンプルな内容にまとめ上げよう。本当に伝えたいことを明確化できるように、足し算でなく、引き算にして構成する。

本論に至る話の流れは、世の中で今起きている事や報道されている現象から、話し手が感じたこと、そして学んだことについて触れていく。書籍からヒント得たテーマを話す場合には、書籍の引用を説明するだけでは話し手に共感してもらえない。

自分で見たことや経験したエピソードを通じて自分が学んだことを織り交ぜれば、説得力が増す。書籍の受け売りでなく、話し手が人生から学んだ貴重な気づきを、聴衆に伝えることに情熱をこめよう。

3-3、クロージング(落ち・サゲ・締め)

本論の説明が終われば、締めくくりに入る。落語なら最後の「落ち」にあたり、「なるほどその通りだ」と聞き手を納得させる大事な場面だ。スピーチのクロージングも同様に、これまで話してきた本論の要約を、印象に残る短い言葉で締めくくる。話の内容を聞き手の心に刻むだけでなく、人々の行動を促すように、勇気がわき、元気が出る決め台詞をここで使いたい。

「歴史をつくる主役、それは今日ここにいらっしゃる、みなさんなのです」
「ご一緒に時代をつくっていこうじゃありませんか」
「さらに飛躍するには、みなさんの力が必要です。どうか力を貸してください」
「新たな家族が今日生まれ、歴史が刻まれていくことになります」
「過去を変えることはできませんが、未来はつくることができます」
「躊躇する必要はありません。今日から第一歩を踏み出せばいいのです」
「新しい時代の幕が開きました。一緒に、新たな歴史に名を刻みましょう」

こうした決め台詞でスピーチを締めくくれば、聞き手にあなたの想いが伝わる。

さて、構成も重要だが、もう一つ重要になってくるのが、スピーチの全体時間だ。