書き言葉は話し言葉と違ってあとに残ります。当たり前のことですが、メールになるとそれを忘れる人が多くなるようです。携帯メールだけでなくパソコンのメールでも、カジュアルな会話体で文章を書くことが近しさの表れと思い込んでいる人がいますが、そのメールが印刷されて他人の目に触れたとき、どう映るか考えておくべきでしょう。

ビジネスの相手にはある一定の距離を保って礼儀正しく接するべきです。個人的な親しさを文章で表現することは失礼になることもありますから、避けたほうが無難です。相手が自分と同じ笑いのセンスを持っているかどうかもわからないのに、下手なユーモアを使うのもケガのもとです。ビジネスの場では当事者だけでなく第三者に読まれても恥ずかしくない文章を書かなければなりません。これが第一の心がけです。

ビジネス文書には明確な目的があります。その目的を達するために何を伝えるのか、書き始める前にポイントを整理しておくことが大切です。ときどき主語と述語が一貫しない文章を見かけることがありますが、書きたい要素を整理せず、考えのおもむくまま、いきなり書き始めることが原因だと思います。

基本的な流れは時候の挨拶、用件、結びになりますが、1つの文書に盛り込む用件は多くとも3つまでに絞りましょう。それ以上になると相手が混乱します。文書はできるだけ短く、簡潔な表現を心がけ、書き上げたら、誤字脱字がないか、必ず読み返します。クリック一つで簡単に送信できるメールの場合は特に注意しなければなりません。

ビジネス文書は文学作品ではないのですから、名文、美文である必要はありません。身についていない難しい言葉を使うのはかえって見苦しいものです。意思の疎通を図るために、きちんとした日本語をツールとして使いこなせているかどうかがポイントになります。

こうしたことを白紙から始めるのが難しいのであれば、まずは「型どおり」から始めましょう。文書は残りますから、前例から多くのことを学べます。「なるほど、起案はこう書くのか」「こういう便利な言い回しがあるのか」など、過去の事例を参考にしながら実際に書いてみて、先輩や上司にチェックしてもらうのです。その繰り返しの中で自然に「型」が身についてきます。こうした初歩段階もマスターしないままに自分らしさを追求する人がいますが、ビジネス文書はまずスタンダードからと心得なければなりません。

肩肘張らないカジュアルな文章で通じる人とだけメールをやりとりしても、文章は上手になりません。あらたまった場に身を置くことで、あらたまった話し言葉が身につくように、ビジネスにふさわしい書き言葉も、日頃から意識して使う場を持つことが必要だと思います。

恐れ入ります……目上の人に褒められたときやその手を煩わせたとき、着席やお茶を勧められたときなどに。恐縮の気持ちを込めた感謝の言葉として使う。
かしこまりました……相手に対する敬意を込めた承知の表現。「わかりました」の代わりに。
お手数ですが……頼みごとをする文章の冒頭に置くクッション言葉。「~、必要な資料を送ってくださいますか」のように使う。
ご自愛ください……相手の健康を気遣う結びの言葉。自愛に「その身」の意味が含まれるので「お体ご自愛ください」とは書かない。「お忙しい日々が続くと思いますが、くれぐれも~」。
勤しむ……一生懸命に励む様子を慎み深く表現した言葉。「新たな気持ちで業務に勤しみます」。