それほどまでに古泉さんが子供を望んだ理由のひとつに、かつて婚約破棄した相手との間に生まれた娘の存在があった。事情があってずっと会えずにいた実の娘と、鉢合わせる機会があり、それをきっかけに子供を育てたいと強く願うようになる。その願いを、前作『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』では以下のように吐露していた。

「マンガを好き放題描いていても埋まらない欠落はこれだったと確信しました。いい年の大人の男が自分のやりたいことだけを精いっぱいしているというのがみっともないことだ、自分以外の他者に尽くしてこそ人生ではないかとすら思うようになりました。また、厄年をすぎるとぐっと体力や気力が激減し、自分本位の生き方すらしんどくなっています。それまでは自分さえよければいいと思っていた、その自分が満足いかなくなっています」(本文より)

そしてその後、里親制度によって待望の「家族」を迎え入れることができた。渇望していた子育ての実現は、古泉さんにどんな影響を与えたのだろうか。

「これまで僕は、自分を押し殺して何かをするということができない人間だったのですが、子供がいることによって、そちらを優先する機会が増えました。目の前でおしっこをもらしたり、家の手すりにひっかけてあるたすきに首をかけて遊んでいたりしたら、何を差し置いても『待った!』ってなりますから。自分のことどころじゃないです。そういう場面が増えましたね」

離婚する気はなくなり、毎日が幸福

変わったのは、時間の使い方だけではない。新刊『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』巻末に収録されている、養子縁組経験者との対談の中で古泉さんは、「息子さんを迎えてから古泉さん自身が変わりましたよね」「以前はとにかく奥様に対する言動がひどかった」と指摘されている。

「結婚に対して投げやりな気持ちで、『問題が生じた際に関係を修復するよりも、いつでも離婚すればいいや』って思ってたんですよ。極端にいったら、『子供がいないなら、結婚する理由はない』というように思っておりました」

今は、「妻の献身で今の生活が維持できていて、離婚する気は全然なくなった」と語る。里親制度によって、ようやく手に入れた生活はそれほど充実したものだという。

「これまでお金に困ったこともないし、仕事にも恵まれてきました。それがさらに今は『本当に毎日なんて幸せなんだろう。これで不幸せなんて言ったらバチがあたるぞ』と思っています。たとえば僕が舌を出すだけで子供がものすごく笑うんですよ。マンガ家としてこんなことでいいのか? と思うくらい、毎日楽しく過ごしてます。妻のフォローもあって、育児の苦労は全然ないですね」

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)
マンガ家
1969年、新潟県生まれ。ヤングマガジンちばてつや大賞受賞。代表作に『ワイルド・ナイツ』『青春☆金属バット』ほか。近著に『サマーブレイカー』(電書バト)がある。
(構成=藤谷千明)
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