リーダーシップを発揮するための「3要素」とは

リーダーシップには、さまざまな定義があります。学界で昔から言われてきた定義は、「他者に影響を与えて、成果を出すこと」です。しかし、これはリーダーシップを持っている人を識別するための定義でしかなく、どうすればリーダーシップを発揮できるのかはわかりません。

リーダーシップ開発論における基準で最も有名なのが、クーゼスとポズナーの「5つの実践」です。私はそれを参考に、初学者にも理解しやすいように、リーダーシップ行動に必要な「最小3要素」に整理しました。1つ目は「目標設定」。明確な目標を決めて、周囲の人たちと共有します。2つ目は「率先垂範」。権限がなくても周囲を動かすためには、自ら進んで行動することが求められます。そして3つ目は「同僚支援」。周囲の人たちには、行動したくてもしづらい事情が大抵あるものです。それを取り除く支援をします。

もちろん、この3つ以外にもさまざまな要素があります。例えば、目標を決めて走り出した後に、状況の変化に応じて目標を修正する、あるいは、うまく進まない状況でも粘るといった行動は、現実にはよく求められる要素です。しかし、少なくともこの3要素をすべて発揮できなければ、リーダーシップとは言えません。

この3要素を身につける王道は、実際にリーダーシップ行動を取ってみることです。そして、その行動について、周囲からSBIフィードバックを受けます。フィードバックの内容は、どのような状況(Situation)で、どのような行動(Behavior)を取ったことによって、自分と周囲にどのような影響(Impact)があったか、の3点です。リーダーシップは態度のスキルなので、自分はリーダーシップを取ったつもりになっていても、実際には発揮されていないことがあります。そのため、周囲から見てどうだったのか、フィードバックを受けることが重要になるのです。その内容を参考にして、行動を振り返り、改善する形で再度リーダーシップ行動を取ってみます。このサイクルを繰り返すことで、リーダーシップスキルは次第に高まります。

このトレーニングを普段から行うには、フィードバックをしてもらう相手が必要になります。建設的なフィードバックをしてくれる上司や先輩がいればベストですが、それが難しい場合は、互いにフィードバックし合える相手を見つけるとよいでしょう。相手が同じ職場なら、頻繁にフィードバックし合ってスキルを磨くことができます。

フィードバックをするうえで注意したいのは、評価と混同しないことです。相手の人格や業績を評価するものではなく、あくまでもリーダーシップスキルを高めるために行うものだということを、あらかじめ明確にしておくことが大切です。また、小さな成功体験の積み重ねが成長意欲につながりますので、よい面を必ず認めて、信頼関係を築いたうえで改善点を伝えるようにすべきです。