整形外科での早期発見、早期治療が有効

最大の問題は「毎日続ける」ことです。気分転換になるとはいえ、継続するとなるとストレスになる人が多いので、つまらないものではダメです。仲のいい人とペアや集団で行いましょう。過度な運動は逆効果ですから、ストイックになりすぎないこと。

正しい腰の反りと姿勢を保つことも重要です。骨盤を動かし、腹筋力・背筋力を鍛えます。毎日5分でいいから、腹筋と背筋に刺激を与えて骨盤を動かしましょう。

それでも改善しない場合は、整形外科医の判断に従った治療が必要です。下行性疼痛抑制系の働きをよくしてくれる薬の処方をするなど、さまざまな方法があります。

腰痛に悩む人には、痛みに囚われてしまっている人も多く見られます。たとえ手術をしても、ある程度腰痛は残ります。治療の効果は、どれぐらい生活の質が向上したかで判断しましょう。

最後に、高齢者に急増中の疾患を紹介します。日本で365万人の患者数が確認されているのが「腰部脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)」です。50代くらいから増えはじめ、70代では10人に1人といわれています。腰椎には神経の通る管状の空間「脊柱管」があります。加齢によって背骨の変形などが起こると、この脊柱管が狭くなり、中を通っている神経の束が圧迫されます。それにより足の痛みやしびれを伴います。

歩くことによって腰痛のほか足の痛みやしびれといった初期症状が出たら、整形外科での早期発見、早期治療が有効です。腰ではなくて足の痛みだけということもありますから、整形外科で神経障害がどこにきているかを明らかにしてもらいましょう。薬や注射、理学療法、物理療法によってかなりよくなります。

▼POINT!
・どこから始まる?
突然の激しい痛みの場合は、すぐに整形外科へ。ゆるい腰の痛みが数カ月続く場合は、ストレスが原因のこともある。
・最悪の場合は?
「精神的なストレス」が強いと、痛みが何倍にも強くなることも。重度のうつと併発すると、精神科と連携した長期の治療が必要に。
・予防・改善策は?
快感は痛みを抑制するため、適度な運動と気分転換を。どんな腰痛も完治は難しいので、いまよりよくなることを目標に。
紺野愼一
福島県立医科大学副学長
理事、医学部整形外科学講座教授、同附属病院診療科部長、医学博士。日本腰痛学会理事長などを務め、脊柱管狭窄症などの研究に携わる。著書に『あなたの腰痛が治りにくい本当の理由』。
 
(構成=干川美奈子 撮影=向井 渉)
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