そもそもPepperは現時点で成功しているとはいえず、いわば「寝た子」ともいえる事業です。ソフトバンクはアルデバラン社の買収に100億円以上を投じたとみられており、現時点では「高い買い物だった」との評価が少なくありません。確かにコミュニケーションに特化したロボットは画期的でしたが、ロボット事業をビジネスとして立ち上げるのは、まだ早かったのかもしれません。

なぜ「寝た子」を起こしてまで怒るのか?

ではなぜ、ソフトバンクは「寝た子」を起こすように、「林要氏は『Pepperの父』ではない」などと言い始めたのでしょうか。

ソフトバンクのウェブサイトより。

林氏は2015年に「GROOVE X」を立ち上げ、ヒューマノイドロボット「LOVOT」の開発のために、総額80億円の資金調達を行っています。出資者は未来創生ファンド、産業革新機構(INCJ)、Shenzhen Capital Group(深セン市創新投資集団)など。このうち未来創生ファンドはスパークス・グループが運営し、トヨタ自動車と三井住友銀行(旧さくら銀行を含む)が出資するファンドです。なお林氏はもともとトヨタ自動車の空力技術者でした。

2019年に販売開始を目指している同社の「LOVOT」は、LOVEとROBOTにちなんで名付けられたものだそうですが、コンセプトペーパーなどを見ると、Pepperが実現しようとしているコンセプトと極めて似通っていることに気づきます。

ソフトバンクからすれば、まだビジネスとして成功していないPepperと似たような代物を、当時の責任者が中心になって大金を調達して始めようというのですから、「ケンカを売られた」と思うのもわかる気がします。

複雑化したロボットより、接客型ロボットを優先

この問題のポイントは、ロボットに人間と等しい情念や愛情といったフィルターを置くことで、人とネットを媒介するというPepperのコンセプトそのものにあります。そのコンセプトを決めるうえで、中心的な役割を果たしたのは、たしかに孫氏だったようです。

ロボット事業は簡単ではありません。クーリエ・ジャポンの記事によると、「(2011年の)アルデバランの売上総額は、500万~1000万ユーロ(当時約5億5000万~11億円)だったとされるが、その数倍の資金が必要となった」ということです。

そしてこの記事では、アルデバラン社の創業者であるメゾニエ氏と孫氏との行き違いについて、「ソフトバンクは高度に複雑化したナオのようなロボットよりも、店や大企業の事務所で客の応対ができる接客型ロボットを優先的に開発したがっていた」と書いています。