やるまでは簡単に考える。始まったら真剣に

【原】疑問に思ったことや仮説を立てたことをすぐに行動で確認していく、という動きは重要で、トヨタの現場では「巧遅より拙速」とよく呼ばれていました。拙くてもいいから速く動いて仮説の検証をしていこう、と。

『ACTION! トヨタの現場の「やりきる力」』(原マサヒコ著・プレジデント社刊)

【宗次】速く動く、というのは大事ですね。私も経営者としての重要な能力に「せっかち」というのがあると思っています。まずやること。

【原】拙速とせっかち、似ていますね。

【宗次】速く動くと失敗するし、腹が立つことも多いんだけれども、「早めに結論が出る」ということが何よりのポイントですよね。結論が出れば対応できますから、おっとりよりもせっかちです。ビジネスなんて、やってみないと分からないことばかりですし。

【原】トヨタのショールームでは、お店でよく集客施策を考えたりするのですが、その集客アイデアも「まずやってみよう」という考えですね。やりながらお客様の反応を見て修正していこう、と。ところが多くの企業では企画段階でしっかり固まらないとゴーサインが出ないというパターンがほとんどみたいですね。

【宗次】まず動いてほしいですよね。それから、行動の前提となる「目標」を持ってほしいと思います。若者に対して「夢を描け」とかよく言われますが、夢なんて見ていてもただ見ているだけで終わってしまう。今年はどうしたい、とか今週はどうしたい、とか具体的な目標達成の連続で夢というのも達成できるわけです。

【原】今の世の中は変化が激しいので長期的な目標設定がしにくくなっていますしね。

【宗次】目標を設定するということについての姿勢は今も昔も一緒だと思います。ただ、今の時代は楽しいことが多くて流されてしまいがちでしょうね。手元のスマホを開けば楽しいことが一杯ですものね。どうでもいいような情報にまでアクセスしやすくなってしまっているので自分をコントロールすることが難しくなっているのは確かですね。

【原】そういった意味では、宗次さんは着実にご自身の目標をクリアされていますね。ココイチを手放した後は、ずっとお好きだったクラシックで事業をされていらっしゃいます。これは長期的に設定されていた目標だったんでしょうか。

【宗次】いえ、行き当たりバッタリの成り行きなんですよ。

【原】そうなんですか、てっきりココイチ時代から「好きなことを仕事にするぞ」ともくろんでいたのかと。

【宗次】引退した時は何も考えていなくて、引退した翌々日に「さあ何をやろうか」と考えました。福祉とクラシックに関心がありましたので、自宅でサロンコンサートをやることになったのですが、名古屋にたまたま土地があって買っていったらあれよあれよとコンサートホールを創ることになったのです。

【原】はじめからコンサートホールを創るつもりではなかったんですね。

【宗次】そう、行き当たりバッタリです。ココイチの前にやっていた喫茶店も、ココイチも、やるまではいつも簡単に考えてある日突然、行動するんです。そして、やり始めてから真剣に向き合って考えるんです。

【原】まさに拙速、いや「せっかち」でやってこられたと。

【宗次】事前にいろいろ考えすぎて動くことをやめてしまうのではなく、まずやってみることですね。そうすると、やりながら鍛えられていくはずです。ただし、中途半端に動くのではなくて、自分の身をささげるつもりで全力を出し切ることが肝心ではないかと思います。

宗次 徳二(むねつぐ・とくじ)
カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)創業者 1948年石川県生まれ。67年愛知県立小牧高等学校卒業。同年、八洲(やしま)開発株式会社入社。70年大和ハウス工業入社。73年岩倉沿線土地開業。74年喫茶店バッカス開業。78年カレーハウスCoCo壱番屋創業。82年壱番屋設立、代表取締役社長に就任。98年壱番屋代表取締役会長就任。2002年壱番屋創業者特別顧問就任。著書に『CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり』(日経ビジネス人文庫)、『夢を持つな! 目標を持て!』(商業界)などがある。