【原】会社経営をしていると「ゴルフができるようになるといい」とか言われたりもして私も困っているんですが、宗次さんはどうですか?

【宗次】確かに、私もゴルフをやってみたこともありますが、「こんなことやっていていいのかな」と思ってしまいました(笑)。あれは創業経営者がやるものではないですね。「人脈が広がる」とか言いますが、人脈を広げたところで誰か喜んでくれる人はいるのか、と考えてしまいました。

【原】そこでも「誰を喜ばせたいのか」ということを考えていたわけですね。

商売は「苦労の総合商社」

【原】トヨタの現場の行動思考として顕著なのが「言い訳をする」ということが嫌がられる点です。言い訳を考えている時間が無駄だ、と。そんなことに時間を使うなら、どうしたら上手くいくかを考えろと言われるのです。

宗次徳二氏と『Action! トヨタの現場の「やりきる力」』著者の原マサヒコ氏。

【宗次】言い訳は確かによくありませんね。私もよく「不況のせいにするな」と言っていました。

【原】IRなどでも「長引く景気低迷のため業績が悪化し」という表現はよく出てきますものね。

【宗次】まあ業種や業態によって違いはあると思います。売上1000億や2000億の大企業であれば景気の影響も少なからずあるでしょう。ただ、下請けや孫請けだからといって親会社のせいにしてはいけません。何かアイデアは出せるはずです。

【原】景気は本来関係ない、ということですよね。

【宗次】そう、目の前で自分たちが何をするか、ということです。ココイチも創業当初は1つの店舗で1日20人~30人の来客からはじめて徐々に増やしていきました。お客さんが増え、店舗が増え、その積み上げです。目標もだんだん上がっていき、振り返ってみたら右肩上がりになっていた。

【原】上手くいかなくても言い訳をせずにコツコツとできることをやっていた、と。

【宗次】そう、行き当たりばったりではありましたが、その時々は一生懸命、まさに命がけでやってきたのです。そうとしか答えようがないのです。

【原】命がけでやってきたということですが、困難にぶつかった時の考え方をお聞かせください。トヨタの現場で働いていると、「困難にぶつかるのはラッキーだ」と考えるようになりました。何か困難にぶつかると「解決するチャンスを得た」と考える人ばかりなのです。

【宗次】同じですね。ココイチの経営では「商売というのは苦労の総合商社だ」と感じていました。

【原】苦労の総合商社、ですか。本当にいろいろな苦労をされた感じが伝わってきますね。

【宗次】経営自体は先ほど言ったように順風満帆でしたが、日常は問題だらけで苦労したものでした。でも問題と言うのは解決するものですからね。

【原】確かにそうですよね。

【宗次】どんな問題が起きても、「この程度で良かった」「もっと大変な人は一杯いるはずだ」と考えていました。それも、経営が右肩上がりだから言える、ということはあります。すべては右肩上がりで解決するのです。