出世したら嬉しいけど、ストレスで早死にするのか、それとも――。役職や仕事の慣習があなたの体をむしばんでいるかもしれない。最新の研究結果を紹介する。

ビジネスマンの健康を20年以上診た結論

「課長で定年する人」と「役員に昇進する人」。長生きできるのはどちらでしょうか?

写真=iStock.com/PeopleImages

役員といえば仕事のストレスが多そうだから、健康を害しやすく寿命も短いのではと思う方が多いのではないでしょうか。ところが実際は課長で定年する人のほうがメタボ気味で、不健康になる危険性が高いのです。

社会的地位や職業が寿命と関連する要因は大きく分けて2つあります。ひとつは、「ストレス」です。

ストレスの重さは「仕事の裁量権」の大きさによって変わります。

私は大手の外資系企業や日本企業の産業医・専門コンサルタントとして20年以上にわたり、ビジネスマンの健康状態を診てきました。ビジネスマンは出世するほど自分の仕事をコントロールできるようになります。仕事の裁量が増え、ストレスが減る傾向が見られます。メタボになりにくいし、心の病にもかかりにくい。これは海外の研究機関でも実証されています。もちろん役員になったとたん権力闘争に明け暮れて疲れてしまう人もいますが、総じてビジネスマンは出世したほうが健康であるといっていいでしょう。役員に出世して経済的に豊かになればプライベートでも自由度が上がり、さらにストレスは減るでしょう。

逆に、仕事の裁量が少なく自由が利かない人にはストレスが強くかかり、メタボなど生活習慣病になりやすい。怖いのは生活習慣病のツケが20年後、25年後にあらわれることです。40代で医者から「糖尿病です」と言われても、最初は自覚症状がありません。放置したままだと60歳、65歳の頃には目が見えなくなったり、腎不全になって透析を受けなければならなくなったりと、一気に健康にダメージが出るのです。