「抵抗勢力」の人が最終的に推進役になる

――次世代の経営陣を登用するうえで心がけていることはありますか。

【山西】「社外の目」を入れることです。たとえば、取締役候補者は社外取締役が過半数を占める「指名委員会」が選びます。また、社外取締役5名を含む取締役会においては、社長以下の執行役を選定しますが、社外取締役の立場からは能力の有無を判断しづらいはずです。そこで取締役会では、各執行役から担当事業の経営状況等の報告を受ける機会を設けています。担当分野の経営トップである執行役の職務執行を通して、経営陣としての資質等の見極めを行います。

――経営リレーを成功させる本質は一体何だと思われますか。

【山西】企業の長期的な成長を優先することです。三菱電機は設立からもうすぐ100年です。何代にもわたって良質な経営者が続く必要があるという認識を持たなければなりません。途中で自分の成果を優先するような社長にバトンを渡すと経営リレーはおかしくなります。現場の従業員の生活のためには、短期に利益を上げるのではなく、長期的に企業を成長させていく認識を、実績とともにリレーすることが重要なのだと思います。

――それは、現場を大切にするということでしょうか。

【山西】かつて生産技術担当としてカイゼン活動に当たったとき、当初は「抵抗勢力」になっていた他部門の人たちが、最終的には推進役を担ってくれるケースに何度も遭遇しました。そういう人たちは自分のやっていることに誇りを持っているからこそ、最初は抵抗勢力になりますが、いったん理解してもらえれば主体的な推進役に変わります。三菱電機の現場はそういう人材が豊富なのです。そんな現場に経営が何かを強引に押し付けても結局長続きしません。経営が企業の長期的な成長を優先するということは、現場の誇り、主体性を尊重することでもあるのです。

山西健一郎(やまにし・けんいちろう)
三菱電機 取締役会長
1951年、大阪府生まれ。京都大学工学部卒。75年三菱電機入社。2006年常務執行役、08年上席常務執行役(半導体・デバイス事業担当)などを経て、10年執行役社長。14年より現職。
 
(聞き手=松田真一(野村総研上席コンサルタント) 構成=国貞文隆)
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