「ルールメイキング戦略」の欠如が敗因

高い技術力を持つ日本企業が、グローバル市場で海外企業に負けてしまうケースは少なくありません。その1つの理由として、「ルールメイキング戦略」の欠如が挙げられます。

ダイキンは中国市場でインバーターエアコンの売り上げを伸ばす。(時事通信フォト=写真)

今日のビジネスでは、イノベーションが重要なテーマとなっています。イノベーションとは、世の中にないものを生み出し、社会に広く普及させることです。そのためには、消費者に欲しいと思わせるだけでは十分ではありません。その製品・サービスが市場に受け入れられるためのルールが必要です。イノベーティブなものほど、既存のルールによって、あるいはルールがないために、市場への参入を止められる可能性があります。特に近年は、テクノロジーの急速な進歩により、既存のルールでは対応しきれないケースが増えています。例えば、ドライバーを必要としない完全自動運転の実現を目指した技術開発が進んでいます。しかし、事故を起こした場合の責任の所在など、法制面の整備はこれからです。ルールが整備されなければ、せっかくの新技術も普及させることはできません。

また、ドローン(小型無人飛行機)の配送への活用にも期待が寄せられていますが、安全面の規制とどう折り合いをつけるかが課題となっています。広がりを見せているシェアリングエコノミーも、ルール整備や規制と無縁ではありません。日本では、ウーバーに代表されるライドシェア(相乗り)サービスは、法律により原則禁止されています。このように、イノベーションは、ルールの問題を顕在化させます。イノベーションを実現するには、ルールもセットで考える必要があるのです。

ルールは、ビジネスをグローバルに展開するうえでも深く関わってきます。海外に進出する際は、当然その国のルールに則ってビジネスを行う必要があります。また、国家間の協定や国際ルールなどにも影響を受けます。

これまで、多くの日本企業は、すでに存在するルールに合わせてモノづくりをしたり、ビジネスを進めていくのが一般的でした。しかし、そうした対応では、グローバル市場では後手に回ってしまいます。欧米企業は、ルールづくりの段階から、自社に有利になるような働きかけ(ロビー活動)を積極的に行っているからです。日本企業も、自社が製品・サービスを売りやすい環境を確保するために、ルールづくりの段階から関与していく必要があります。これが、ルールメイキング戦略です。