10代から20代前半という若さで、公私ともに人生のどん底を味わった男。彼は保険業界で再起を果たし、トップコンサルティングサービスを設立。いまやTOT(トップ・オブ・ザ・テーブル)(※)の登録資格を持ち、保険代理業にとどまらない業容の拡大を図っている。そんな小野寺佑太氏が、自らの過去・現在・未来を語り、ビジネスや人生への思いを訴える。
トップコンサルティングサービス
2014年11月設立。生命保険および損害保険各社と代理店契約を締結。主に企業の経営層を対象としてニーズに合わせた保険設計を行う。そのほか、法人資産運用、リスクマネジメントなども手がける。外資系生命保険会社にて代理店の部、日本一を複数回獲得している。
小野寺佑太(おのでら・ゆうた)
1985年生まれ。2014年、トップコンサルティングサービスを設立。16年、経営支援に特化したグループ企業、アセット・コンピュテーションを設立。著書に『人生の困難を突破する力』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

実は私は、「保険」という言葉があまり好きではありません。「いざというときに備える」という後ろ向きな感じがするからです。リスクヘッジは大事ですが、いざというときが来なくても、掛けた分以上に戻ってくる貯蓄型保険もある。私は専らそのタイプを、主に経営者やエグゼクティブのお客さまにご提案しています。保険を使って退職金や大きな投資への蓄えを積み上げることも可能なので、皆さま「保険」を資産形成のツールとして活用されています。

私はお客さまごとの目的、目標に最適な保険をオーダーメードで組み立てます。たとえ机を挟んで対面でお話ししていても、意識のなかではお客さまの隣りに座って、つまり同じ方向を見て、一緒に真剣に将来を考えるようにしています。この姿勢を認めていただき、おかげさまで保険以外に税務や財務戦略、資産管理、事業継承などの相談も受けるようになりました。すでに新会社を設け、経営全般にわたるコンサルティングへと業容拡大を進めているところです。

どん底を経験したことがいまの仕事に生きている

子どものころの私は、サッカー一筋。Jリーグ所属クラブのジュニアユースで、プロ選手を夢見ていました。ところが中学時代に両親が離婚して、人生は暗転。実家を飛び出し、やがて中卒で建設業の日雇い仕事に就きました。

17歳で父親になり、18歳のとき建設会社を設立。義理と感謝だけは忘れず仕事に励み、年商も1億円規模へ。地元の業界では若社長として、知られた存在にもなりました。

しかしリーマンショックを境に事業の状況は一変します。資金繰りに追われ、精神的にも追い込まれ、パニック障害やうつ病などを発症しました。ひどい不安感、抑うつ感にさいなまれ、判断力を失い、夜通し公園の周りを歩き続けたこともあります。とうとう妻子は離れていき、会社も解散したのです。

思えば、10代にして建設会社を起こしたのは、妻子を養っていく強い責任感からでした。家庭を持ち独立した選択には、微塵の後悔もありません。むしろ建設業での経験が、今日の仕事に生きています。ただ、建設業そのものが好きというわけではなかった。だから不況が来てストレスやプレッシャーが何倍も増したんでしょう。会社の解散で重い荷を降ろすと心も快方に向かい、縁あって保険会社に就職したのが2013年です。入社後は、人一倍負けず嫌いという生来の性分もあって、1年足らずでトップセールスに。そこで14年11月、再び独立し、いまの会社を設立したのです。

「信用」を「信頼」に変え社会全体に貢献したい

建設業のころも、いまも変わらない私の信条は、義理と感謝を大切にすること。そして、我ながら一生懸命でストイックな生き方は変わっていません。そういう姿に共感してくださる方々に、いろんな場面で助けていただき、ご支持もいただいてきました。ある先輩は、「俺は真剣にアドバイスする。それは佑太の目がいつも真剣だからだ」と言ってくださいました。また私がコンサルティングをさせていただくと「必ず実行する」と約束してくれる経営者の方々が、幸い少なくありません。「小野寺の目は裏切れない」と言ってくださるのです。

挫折を味わって変わったことといえば、まず身の丈を知るようになりました。失敗を環境や他人のせいにしても、這い上がれるはずがない。それまで歩んだ道のりと、現在の立ち位置を自覚してこそ、次にやりたいこと、できることも見えてくる。未来への扉が自然に開かれ、現在の自分よりも上の自分を目指せると思うのです。

それからもう一つ、言葉の意味を深く考えて使うようになりました。最近は講演や執筆にも活動の幅を広げていますので、なおさらです。

意味とともに、言葉にこめる心も大切にしています。例えば「ありがとうございます」というとき、どんなに腰を低くして見せても、そこに心がなければ言葉も態度も相手の心には響かないでしょう。私のほうも「ありがとう」と言ってくださるお客さまの、心を受け止めます。保険やコンサルティングは目に見えない商品です。でも私が心をこめたもの。だからこそ、その商品や成果にお客さまが感動なさって、心底「ありがとう」とおっしゃり、私に対する「信用」が「信頼」へと変わった瞬間は、心に響くんです。信用を超えて、まさに“信じて頼られる”存在になること。これが、私自身、仕事のなかで最も大切にしていることといえます。

当社の経営理念は、「全ては他者の喜びのために」です。私は、人に決められた人生でなく、自分で選んだ人生を歩んできました。同じような選択をして挑戦する経営者の方々を、これからも仕事を通じてぜひ後押ししたい。そして一人でも多くの皆さま、ひいては社会全体に貢献したい。いつの日か、日本の心がこもった商品・サービスをもって世界に感動を届けられるよう、どんな困難も突破して歩み続けます。

(※)世界の生命保険、金融サービス専門職のトップクラスのメンバーで構成されるMDRT(Million Dollar Round Table)。その入会基準の6倍以上の成績をあげた優れた会員のこと。