“リアルとネット”は地続き

ここまでで紹介したように、タダ・ネイティブたちは、公園や友達の家で一緒に遊んだり、仲の良い子とないしょ話をしたりといった、かつての子どもたちがリアルの領域でしていたことの多くをネットでするようになっています。その要因のひとつは、ネット上で伝えられる情報量が大幅に増えたことです。

(上)面白い写真や動画はすぐにシェアする(下)ふざけて大量のスタンプを送り合う遊びも

私が中高生時代を過ごしたガラケー全盛期は、メールで絵文字やデコメ、解像度の低い写真を送るのが精いっぱいで、リアルコミュニケーションと同様の即時性や感情の機微の表現は不可能でした。しかし今は、スタンプや高解像度の写真、動画を即時に送ったり、グループ通話で大勢の友達と同時に話したりと、コミュニケーションの手段が多彩です。

しかも、家庭内Wi-Fiが普及したことで、親が通信料を払っていれば、子どもたち自身はこうした大容量のコミュニケーションをタダで使えます。通信技術の進化とその料金体系の変化により、ネットはリアルと遜色ないやりとりを、リアル以上に便利かつ楽しくできる場になったのです。

それゆえタダ・ネイティブたちは、リアルとネットを区別しません。便利で楽しいのでネットを使っていますが、そこで交流しているのはリアルの友達です。前述の「共闘部」の例についても、「友達の家に通っていたら、友達のお兄ちゃんやその友達と仲良くなった」という以前からある事象のオンライン化といえるでしょう。彼らにとってリアルとネットは、明確な境界のない“地続きの空間”なのです。

“リアルとネット”にまつわる常識が変わる

価値観の形成期にネットに親しまなかった世代は、どうしても「リアルがメイン、ネットはサブ」という感覚になりがちです。しかし今や、チャットやメールのやりとりによるリモートワークでほぼすべての業務をする会社ができるなど、その位置づけが逆転する事象も増えてきました。“リアルとネット”を区別しない世代が社会の多数派になった時、こうした流れはさらに加速するでしょう。

一方で、昨今の若者間でのレコードやラジカセの流行や、「好きな人に告白する時は、LINEではなく手書きの手紙」と話す中2の女の子の声を聞くと、「これはリアルでやったほうがいい」という揺り戻しも起きるのではと思います。いずれにしても、タダ・ネイティブたちは「これはリアルでやるもの」「これはネットでやるもの」という従来の境界線を塗り替え、新しい生活をつくりつつあります。

十河瑠璃(そごう・るり)
博報堂 生活総合研究所 研究員。2013年博報堂入社。博報堂DYホールディングス及び博報堂DYメディアパートナーズにて経理業務に従事し、2016年より現職。生活者の消費動向や子どもの意識・行動変化の分析に携わる。