コーチングのセッションで涙が溢れた

例えば、いらいらするときは、その原因を自分と対話して探る。とことんまで掘り下げると、それは自分でも気づかないようなじつにささいなことだったりする。「自分にはこんなこだわりがあるからいらいらしていたんだな、と感じ方のくせを受け入れることで、自然と気持ちが落ち着きます」

伊藤さんはずっと後輩や部下への対応が苦手だった。後輩の何げない疑問や提案を「自分への非難や、欠点の指摘」のように感じてしまうくせがあったのだ。「でもそれは、純粋な質問や、改善の提案だと気づいた。一緒に考え、意見を採り入れて、状況をよくしていくことができるようになりました」

小さい頃から気づかぬうちに、「こんな自分ではだめだ」と思い込んでいた。実習仲間とのコーチングセッションの中で、本当はこうしたかったという思いを「邪念」と表現した自分に気づき、涙があふれた体験がきっかけとなり、「ありのままの自分を受け入れる、ということが徐々にできるようになりました」。

極めて専門性の高い困難な職務に活かせただけでなく、自分を受け入れ周囲と肯定的に関わるためのスキルとして、コーチングは彼女の財産になったようだ。

▼コーチングを体系的に学べる
日本コーチ連盟コーチアカデミー
コーチングスキルを学ぶコーチ養成プログラム。7時間×6回の基礎コース(税込み11万3000円)と、7.5時間×6回の応用コース(税込み12万3000円)などがある。
伊藤綾華
法務省 保護局総務課 被害者等施策班 係長
入省9年目。犯罪をした人の再犯を防止する更生保護の立場から、被害者を支援する施策の企画・立案を担当。保護観察官として、面接を担当したことも。
 

編集=相馬留美 撮影=伊藤菜々子