ラグビーは尊敬しあえる人間関係を強調する

【三宅】そういう会話がキャプテンとレフリーの間でなされるのですね。

【岡村】もちろん、判定がくつがえることはありません。最近は、ビデオ判定も取り入れていまして、それについてもレフリーはキャプテンに説明はします。

【三宅】当然、微妙なプレーは1試合に何度かあるでしょうね。

【岡村】ルールの解釈を巡っては、いろんな見方ができるわけです。もちろん、説明は英語でされますから、相応の英語力は求められます。

三宅義和・イーオン社長

【三宅】私どもは日本ラグビーフットボール協会と、ラグビー日本代表のオフィシャルサポーター契約を締結して、「公式語学トレーニングサポーター」の記者発表を昨年1月に行いました。その席で、日本ラグビー協会の坂本典幸専務理事がとても興味深いコメントをしてくださいました。それは「いままで日本は文化系と理科系、あるいは運動部系と文化部系というように二者択一で考える傾向があった。しかし、一流選手は得意な分野だけに強いのではなく、総合的な教養を身につけている選手に育ってほしい」ということだったと記憶しています。

代表選手なら全人的なバランスが取れた人であってほしい、ということなのではないかと思いました。したがって、日本の選手は自国の文化に対する知識を、しっかり学んでおく必要があるし、海外の話題にも興味を持っておく必要があるということでしょう。

【岡村】いわゆる教養は欧米の人たちと接する際にはとても大切です。加えて専門性、この2つを併せ持つべきであるということです。

【三宅】イーオンに通っているビジネスマンたちに聞きますと、「ビジネス英語なら専門用語を準備すれば十分だと。ところが、オフタイムの食事や懇親会に席が移ると、そこで何を話していいかわからない」と言うわけです。そうしたビジネスマンが、実は非常に多いのです。

ラグビー選手も試合が終わった後のパーティーで、英語はさることながらラグビー以外の話題も話せると、とても世界が広がるでしょうね。本当の意味の友人になれるかもしれません。

【岡村】その通りです。いまでも試合後のファンクションの席で、両チームのメンバーが互いに交流している姿は多くありません。自国の選手同士で固まっている光景が見られます。

それでは真の交流が生まれない。ラグビーは「respect(リスペクト)」といって、お互いに尊敬しあえるような人間関係を強調しています。そのためにはやはり、相手側の文化も知らなければいけないし、相互の理解があって初めて、スポーツによる国際交流の意味合いが出てくるのではないかという気がします。できれば、両軍がビールを飲みながら、お互いに国や家族のことを語り合っているような場面が多くなるといいと思います。