スポーツは勝たないと注目されない

【三宅】これからの日本の英語教育改革の方向性もあるのでしょうが、まず正しい日本語を体得しないとダメです。日本語では、情緒的な発言しかできないのに、いきなり英語で論理的に話すというのは、そもそも無理です。日本語できちんと意見を言って、その理由をしっかり論理的に述べるという訓練が重要になってくるのでしょうね。

そこで思い出すのが、日本が4大会ぶり4度目の出場を果たした、2017年の女子ラグビーワールドカップでの香港戦勝利後のシーンです。齋藤聖菜キャプテンが、スポーツチャンネルの生中継でインタビューの最後に、「Thank you for supporting us. We will be back here four years later.」と堂々と言われましてね。80分走り回った後であれだけしゃべれるというのは、なかなかすごいと思うのです。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』(三宅義和著・プレジデント社刊)

【岡村】それは立派ですね。ラグビーに対する情熱が言わせた言葉だと思います。女子の場合はまだ、男子以上にフィジカル面で世界との差が大きいと思います。それが決定的な差になっているのは事実だと思いますが、実際は男子と変わらないほど敏捷、俊敏な大変いいプレーをします。しかも、見ていても大変楽しい試合をしています。

女子サッカーが「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝から盛り上がったように、スポーツは何と言っても勝たないと盛り上がりません。女子ラグビーは国内に本格的なリーグが存在しないこと、代表の強化試合の機会が少ないことなど課題が山積していますが、これから男子と同じようにフィジカル面で強くなっていけば、必ず世界レベルのチームになっていくと期待しています。

【三宅】男子はどうですか。

【岡村】2015年のロンドン大会は3勝1敗で、得失点差で決勝トーナメントに進出することができませんでした。2019年はそれ以上の結果を目指しています。具体的にはベスト8、ベスト4を視野に入れています。そのためにはオールジャパン体制で戦う必要があります。2016年秋から日本代表のヘッドコーチ(HC)を務めるジェイミー・ジョセフ氏には、2017年から「チームジャパン2019総監督」という新設ポストに就いてもらいました。この結果、ジョセフHCは、日本代表だけでなく、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦する「サンウルブズ」のHCも兼務することになりました。オールジャパン体制で強化に臨んでいるところです。

【三宅】わかりました。活躍を期待しています。

岡村正(おかむら・ただし)
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長、東芝名誉顧問
1938年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。大学ではラグビー部に所属。62年東京芝浦電気(現東芝)に入社。73年にウィスコンシン大学経営学修士課程を修了。94年取締役、96年常務を経て、2000年6月に東芝社長に就任。05年会長となり、日本経済団体連合会(日本経団連)副会長に就任。07年日本商工会議所の第18代会頭を務める。 2015年春の叙勲で旭日大綬章受章。
(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)
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