自分にとって居心地の良いことだけを追求

だが、入社2年目を迎えた私は、相変わらずモテないままだった。夏になるころには会社もイヤになり、アメリカに住む両親のもとを訪れ「会社を辞めたい」と伝えた。「それは早すぎる、もう少し待て」と諭され、会社に残ることにしたのだが、やはり辞めたい気持ちは変わらない。

そんななか参加したのが、ANA(全日空)のCAとの合コンである。その合コンでカナさん(仮名)という岡江久美子似の美女と会った。ノリのよい、いかにも広告代理店風の合コンだったが、私だけはキョトンとし、発言もどこかダサかった。「趣味はスーパーで買い物することです」などと言ったような記憶がある。

写真=iStock.com/kokouu

その後、カナさんと2人で会うことになったのだが、彼女は「あなたは広告代理店っぽくないオタクみたいな感じで、騒がしくないから、あのとき気になったの」と言った。このときにわかった。別に高いスーツ、チャラい会話、派手なシャツなんてものは、女性から少しでも興味を持ってもらうためには不要だということが。

結局、モテようと頑張ってもその努力は空回りすることのほうが多い。だったら無理をする必要はない。そこから私は、世間でまことしやかに語られている「モテる格好」「モテるヘアスタイル」「モテる持ち物」「モテる店」などを意識することをやめた。自分にとって居心地のよいことだけをする、と決めたのである。

意外な理由で突然モテることもある

途端に、服装などには無頓着になった。会社にいたころはチノパンに無印良品やユニクロの白いシャツを着て、できるだけこざっぱり見せようとしていた。が、会社を辞めてからは毎日黒のジーパンに白いシャツ(襟まわりが黒ずんでいようと、シミが付いていようと気にしない)だけを着るようになった。寒ければ黒いジャケットを羽織る。暑ければ短パン・Tシャツ・サンダルになる。髪の毛はQBハウスで切り、カバンは売り場でもっともファンキーな柄をしたEASTPAKのリュックを店員に選んでもらうようになった

結局、カナさんとは4カ月に1回、2人で会うだけの妙な関係だったが、彼女と会うようになってから、とある別の女性からも気に入られた。すでに長く付き合っている年上の恋人がいるので、要するに私は「間男」なのだが、彼女は「あなたは多分真面目な人だと思う」と言ってくれた。

カナさんからは「広告代理店っぽくない」と言われ、別の女性からは「真面目」と言われる。しかも、このときすでに身なりは一切気にしなくなっていた。「人間、意外な面でモテることがあるし、ステレオタイプな『モテ』要素なんてものにこだわる必要はない」と、ここで悟ったのである。