「離婚=男が悪い」「女=社会的弱者」は逆差別か

拓海さんがそう信じて疑わなかったのには理由がありました。拓海さんは子煩悩で、長男が誕生してから別居の前日まで、きちんと子育てを手伝ってきたそうです。例えば、息子さんの行事には必ず参加し、保育で使う布団を用意したり、上履き入れを作ったり、育児には全面的に協力してきたという自負がありました。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/THEPALMER)

だから、「小さい子供には父親より母親のほうが必要だから」「母親のほうが家にいるから」「母親に経済力がなければ、父親に養育費を払わせればいい」などと妻が身勝手なことを言い出しても思い通りにはならないだろうと考えたのです。

しかし、調停の場では残念ながら、拓海さんの意見は全くといっていいほど聞き入れられなかったそうです。妻はあろうことか拓海さんを「DV夫」にでっち上げたのです。妻は裁判官にこう訴えました。

「旦那の暴力から逃れるため、息子を連れて実家に戻ってきました。旦那のことは怖くて仕方がないので結婚生活を続けるのは無理です。これからは私が1人で息子を育てていきます」

DVに関しては拓海さん本人には身に覚えがないのですが、拓海さんがそれを主張すればするほど、「言い訳している」と見られ、うさんくさい人物と判断されてしまったのです。結果、裁判官や調停委員は“被害者”である妻のほうになびいていき、半ば強制的に「親権は妻」という条件で離婚させられてしまったのです。

拓海さんは私に訴えます。

「離婚の計画や子供の連れ去り、そして偽装DV……どれも妻は確信犯だと思います。そんなことが認められるなんて信じられません。法廷は男女平等であるべきです。しかし実際は、『離婚=男が悪い』『女=社会的弱者』と決め付けているように僕には思えます。逆差別じゃないでしょうか」

▼「子供の連れ去り」に法律は驚くほど無力

拓海さんのように子供のことを心の底から愛し、子育てを積極的に手伝い、そして将来的には子供の入学式や卒業式、そして入社式や結婚式への参加を心待ちにしていた男性にとって厳しい現実があります。

厚生労働省の「離婚に関する統計」(2009年度)によると未成年の子がいる家庭の離婚件数13万8632件(複数の子がおり、親権を夫と妻が分け合った場合を除く)のうち妻が親権者となるケースは11万8037件(85.1%)。夫が親権者となるのは2万595件(14.9%)に過ぎません。つまり、夫は離婚すると8割以上の確率で子供と離れ離れになってしまうのです。

そもそも夫婦が同居しながら離婚の話を進めることは難しいので、ほとんどの場合、離婚より前に別居します。その際、「妻が子供を連れて実家に帰る」という状況になった場合、子供を引き取っている側が離婚後も引き続いて子供を育てたほうが子供への負担は少ないという判断が下され、そのまま妻が親権を持つことになるのです。

男性は、離婚時に子供の親権を決めるにあたり、現実には夫側のほうが不利であることを知っておいたほうがいいでしょう。