12月21日に実施された州議会選挙では、独立賛成派が過半数を制する結果となりました。これにより、カタルーニャ独立問題は長期化することが決定的となりました。そのため、中央政府と州政府の対立は続き、その結果、スペイン内政の流動化が続くことなり、同州に進出していた企業の対応はさらに難しくなったと言えます。

一方、EU各国ともカタルーニャの独立問題については、静観又は中央政府を支持する姿勢をとっています。その背景には、いずれの国も同様の問題を抱えているということがあり、EU加盟国を初めとする国際社会から国家承認を得ることは極めて困難であることに変化はありません。

世界に広がる地域独立機運

カタルーニャばかりでなく、昨今の地政学リスクの多様化に伴い、世界的に地域独立運動が拡大する傾向にあります。特に、ナショナリズムの高揚、所得格差等の要因から、独立の機運が高まっている地域が増加しています。

既述の通り、カタルーニャ自治州は財政的に豊かであるため、州民の多くは税の再配分についえて不公平感を持っています。逆に、財政的に乏しい地域も同様に、分離独立の機運が高まるという傾向があります。格差を認識している地域は分離独立の機運が強まると言えるでしょう。

今回の分離独立問題については、欧州における右傾化・ナショナリズムの高揚の影響も挙げられます。例えば、2017年5月7日に行われたフランス大統領選挙の2回目の投票では、EU残留派のエマニュエル・マクロン氏が、極右政党の候補者に大差で勝利する結果となりました。

2016年6月の英国でのEUに関する国民投票ではEU離脱派が勝利し、米国では2016年11月に米国第一主義を標榜するトランプ氏が当選するなど、世界的に右傾化が進展する中で、このフランス大統領選挙結果について、多くのメディアが、極右勢力は退潮しているとの論調を展開しました。

しかしながら、2017年9月24日に実施されたドイツ連邦議会選挙、10月15日に実施されたオーストリア国民議会選挙、10月20~21日に実施されたチェコの下院議会選挙においては、極右政党が大躍進する結果となりました。オーストリアでは極右政党が政権与党となり、欧州において外国人 (移民)排斥・民族主義的を標榜する政党が政権与党となっている国は、ポーランド(法と正義:PiS)、スイス(国民党)、フィンランド(真のフィンランド人)、ノルウェー(進歩党)、オーストリア(オーストリア自由党:FPO)の5カ国となりました。

このナショナリズムの高揚の要因は、簡単に解決される問題ではありません。そのため、今後も続く可能性が極めて高いと言えます。欧州においても、英国のスコットランド独立問題、イタリアにおける北部州独立問題、ベルギーにおけるオランダ語圏とフランス語圏の対立問題、フランス領コルシカ島の独立問題等が存在します。

中東では長年にわたり、クルド人の独立の問題が存在します。クルド人は国家を持たない世界最大の民族とも称されていますが、IS(イスラム国)制圧における実働部隊の主力をクルド人が担っているため、中東での存在感を高めています。2017年9月25日に実際されたクルド独立の住民投票は賛成がほとんどを占めましたが、周辺国、米国などの反対により、立ち消えの状況であるものの、今後もクルドの独立問題は中東の波乱要素となり得る状況です。

視点をさらに世界的広げると、状況は複雑です。特に、世界的に人口が増えているイスラム教徒の分離独立運動は枚挙に暇がありません。中国の新疆ウイグル自治区、フィリピン南部のイスラム教徒等、世界各地にその兆候が見られます。