内向きになっているのは子どもだけではない

外国に対して子どもの価値観はどう変化しているのでしょうか。「子ども調査」では「日本のことと世界全体のこと、どちらを第一に考えるべきだと思うか」という設問があります。1997年の段階では「世界全体のことが第一」という考え方が6割以上を占めていたのですが、2017年の調査で初めて「日本のことが第一」が逆転しました。

実はこのような傾向は子どもだけに限ったことではないのです。

博報堂生活総研で隔年で実施している「生活定点」調査によると、20~60代男女の海外旅行経験率(出張を除く)」は2016年調査で73.0%となっています。20年前の1996年は60.7%なので、全体の経験率は徐々に上昇しているのですが、これは主に40代以上が牽引しており、20代、30代の経験率はむしろ減少しています。

また、価値観の点でも「世界の貢献よりも日本の利益を第一に考えるべきだ」という考え方がこの20年間で徐々に増加し、世界への貢献を志向する人は徐々に低下してきています。

価値観が内向きになってきているのは、子ども固有の変化なのではなく、むしろ日本人全体の変化なのです。そして、それは近年、世界各国で起こっている動きとも、重ねて見ることができそうです。

酒井 崇匡(さかい・たかまさ)
博報堂 生活総合研究所 上席研究員。2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、教育、通信、外食、自動車、エンターテインメントなど諸分野でのブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。2012年より博報堂生活総合研究所に所属し、日本およびアジア圏における生活者のライフスタイル、価値観変化の研究に従事。専門分野はバイタルデータや遺伝情報など生体情報の可視化が生活者に与える変化の研究。著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。
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