【水野】大学を会場にするのは、子どもたちに非日常空間を提供したいから。キャンプの4~5日間で子どもたちの人生がガラリと変わるかもしれない。そんな可能性を秘めたキャンプですから、ディズニーランドにいくみたいにワクワクした気持ちできてほしい。実際に大学を見て、「こんなところで研究したい」と思ってくれたら大成功です。

【田原】どうやったら子どもたちはディズニーランドみたいに楽しめますか。たぶんそこが1番難しいと思う。

【水野】僕たちが意識しているのはコミュニティ。もちろん「何を学ぶか」も大事ですが、それ以上に、「どこで誰と学ぶか」がモチベーションを左右します。ですから、初めてキャンプにくる中高生が打ち解けられるように遊びの要素を入れたり、一緒に課題を悩んでくれる大学生をつけるといった工夫をしています。オンオフの切り替えをして、プログラミングのときはそれに集中。オフはみんなでかき氷を食べたりゲームをしてコミュニティづくりをしています。

【田原】僕はプログラミングのことがまったくわからない。初心者の中学生に、どうやって教えるのですか。

【水野】その子が興味のあるもので教えます。たとえばiPhoneのアプリに興味があるなら、パソコンの「Xcode」というソフトでアプリをつくる方法を教えます。ゲームに興味があるなら「Unity」というソフトで実際にゲームをつくってもらう。CGに興味がある子、LINEのスタンプをつくりたい子、IoTをやりたい子、本当に人それぞれですね。

【田原】中学生がIoTのプログラミングをするの? すごいね。

【水野】このまえ賞を獲った子は、ハンガーに湿度センサをつけて、乾き具合をスマホで見られるアプリをつくっていました。プログラミングを始めて半年くらいだったかな。

【田原】プログラミングは開発用の言語を覚える必要がありますよね。中学生がそれを覚えちゃうんだ。

【水野】プログラミング言語のほかに、英語や数学の能力も必要です。でも、中学生はよく伸びる時期なので、やっていくとどんどん覚えていきます。

【田原】つくったアプリはどうするんですか。自分で使うだけ?

【水野】もちろん自分でも使いますが、App Storeで世界中に公開している子も多いです。中高生でも、公開すればプロと同じ土俵に立てる。いいアプリならダウンロードされるし、そうでないものはされません。

【田原】教える先生のほうはどうですか。人気だから、先生が足りていないんじゃない?

【水野】僕たちは先生をメンターと呼んでいて、大学生を採用しています。キャンプだと、だいたい子ども6人にメンター1人。ぜんぶで500人のメンターがいて、年間では150人採用しています。応募の倍率は3倍くらいです。

【田原】そんなに人気なんだ。採用基準はやはりプログラミングの能力?

【水野】プログラミングのスキルは必須です。ほかにコミュニケーション力や最後までやり抜く力も重視しています。メンターは子どもたちに「こんな先輩になりたいな」と尊敬される存在でなければいけません。