「陸王」も「ナイキ」も“魔法のシューズ”ではない

大迫、設楽らの活躍で、「ズーム ヴェイパーフライ4%」は、市民ランナーにとっても、憧れのアイテムになった。2万5920円(税込)と高額であるにも関わらず、サイズによっては入手しづらい状態が続いているほどだ。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/Ivanko_Brnjakovic)

筆者は高橋尚子、野口みずきなど“金メダル”シューズを手掛けてきた三村仁司氏がアシックスで別注シューズを担当していたときに神戸の工場まで取材に行ったことがある。そのときに聞いた三村氏のこんな言葉が印象に残っている。

「毎年、新しいシューズが出ますけど、そのシューズがいいとは限りません。型が古くても、自分に合うシューズが一番だと思いますよ」

▼自分にとっての「陸王」を選ぶことが大事

これまで多くのランナーを取材してきて、シューズひとつでタイムが大幅に短縮するようなことは聞いたことがない。ただし、その逆はある。合わないシューズを履くことで、マメができたり、特定の部位が張ったりといった異変を感じることがあるからだ。そうなるとタイムを大きく落とすことになる。

ナイキの最新テクノロジーが万人にとって“魔法のシューズ”になるわけではなく、自分にとっての「陸王」を選ぶことが大切になってくるだろう。流行に振り回されず、自分に必要なものをしっかりと見極めることが“賢者の選択”のような気がする。

酒井政人(さかい・まさと)
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを 中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新 ・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るため に必要なこと』など。http://www.masatosakai.biz/
(写真=iStock.com)
【関連記事】
「箱根駅伝優勝」を企む慶應三田会の策略
なぜWBC選手は“埼玉製”の野球用品を愛用するのか
野球の乱闘にメジャー選手が積極的なワケ
一流経営者がゴルフをたしなむ4つの理由
最もスポーツをするのは70代前半だった