M&Aは事業承継などオーナー企業の問題を解決できるか? 自社もM&Aで業容拡大を続けるM&Aアドバイザリー企業のGCA。創業者の渡辺章博氏が日本のM&Aの今と未来を語る。

経営環境の劇的な変化はピンチではなくチャンス

日本企業、特に中堅規模の企業の事業環境が大きく変化しています。国内では少子高齢化や市場のシュリンク(縮小)が叫ばれて久しく、一方でグローバル化やデジタル革命、異業種競争といったファクターが、自社のビジネスを根底から揺さぶっています。

こうした外部環境の変化が、オーナー経営者による事業承継売却を加速させています。単に年齢や家業を継ぐ人がいないという問題ではないのです。

これは日本ばかりでなく、先進国共通の課題です。実際に、GCAの売上高はグローバルで約200億円規模ですが、その約3分の2は欧米を中心とした事業承継に関連した案件からくるものです。日本とは違い、市場がシュリンクするどころか成長している欧米でも、事業承継は重要なテーマなのです。

パラダイムシフトの真っただ中にある今、企業は事業をどう成長させていくか、事業承継にはどう取り組むべきか、私の考えをまとめてみたいと思います。

私は、自身もオーナー経営者であり、GCAの経営に当たる中で、企業オーナーが抱える多くの課題に対して、M&A(合併・買収)が大きな力になると考えています。日本の経営者は事業を伸ばしたい、お客さまのために役に立ちたいという気持ちが強く、事業の価値を金銭に置き換えて売り買いすることを敬遠しがちで、まだまだM&Aに抵抗がある人もいるかもしれません。

しかし冒頭で述べたように、今、経済環境は、そのようなことを言っていられないほどのスピードで変化しています。私も含めてオーナー経営者は、自分が育ててきた企業、事業をこの先5年、10年と伸ばすには、M&Aをいかにうまく使うかが、大きなカギを握っているのです。

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企業にとって最大の経営資源は、従業員です。その持てる力をいかに引き出すかにかかっています。しかし、すべて自前で整えるには限界がありますし、スピード感も必要です。

経営資源のいち早い獲得手段として有効な施策は、M&Aをおいてほかにありません。

私は2004年にGCAを創業しました。それ以前にも二度ほど会社を興したことがあり、GCAは三度目の起業になります。いずれの起業においても、事業をゼロから立ち上げることの大変さを痛感しました。

ゼロからのスタートでは会社の知名度もない、信用もない、何よりもお客さまがいない。そしてそれゆえに売り上げが立たない。事業を始めたわくわく感はありますが、創業者としてはとても厳しい経験でした。

当社は06年、M&A事業者としては日本で初めて東証に上場を果たしました。さらに08年には米国の独立系投資銀行であるサヴィアン社を買収、16年にはイスラエル・欧州のアルティウム社を買収しました。これらの経営統合により、10カ国15拠点で事業を展開できるようになりました。

私たちはM&Aアドバイザーですが、私たち自身がM&Aを行うことでM&Aの素晴らしさを改めて実感することになりました。なぜなら、会社を買った瞬間からお客さまがいて、売り上げが立っていて、優秀な人材もいるのです。経営者として自分の会社を成長させていくには、もちろんオーガニックな成長をベースにしながら、成長をさらに加速させるための選択肢として、M&Aは必須です。

実際に機会があればM&Aに取り組みたいと考えている経営者も多いのではないでしょうか。

海外進出を考えるならなおさらです。中堅企業にとって人材不足は大きな課題です。人材がいないために、目の前にお客さまがいて大きな市場があるにもかかわらず、それらをつかむことができない、というのは大きな機会損失です。

その時M&Aが力を発揮するのです。GCAがまさにそうです。人材やマーケットの獲得のためにM&Aを有効に活用してきました。M&Aを行わなければ、このような短時間で、現在のような世界トップクラスのM&Aアドバイザリー会社になることはできなかったでしょう。

「M&Aとは時間を買うこと」と言われることがあります。

M&Aのメリットを表した言葉ですが、急がない企業は時間をかけて自力で成長すればよいようにも取れます。しかし今はもう時間をかけている余裕はありません。グローバルな競争が激化し、短期間でビジネス構造が大きく変化する時代になっています。まさに経済戦争のただ中で、いかに早く市場を取り、勝ち組になるかが、企業の生死を分けると言っても言いすぎではありません。「いいものであれば生き残る、いいものであれば売れる」という時代は、残念ながら終わってしまったのです。

そこにスピードが伴わなければ負けてしまうのです。

国内市場が縮小するから海外へ、では失敗する

より早い成長を期するものの、企業経営をする者にとって、「いつ海外に出て行くべきか」というのは、大きな決断となります。

中には「日本市場がシュリンクするので出て行かざるを得ない」と語る人もいます。

ただ私は、それは間違いだと思っています。海外に成長のオポチュニティーがあるからこそ出て行くのです。

「日本がだめだから海外」というのでは必ず失敗します。そのようなネガティブな考え方であれば出て行かないほうがいいでしょう。

なぜならグローバルでのビジネスは日本でのビジネスよりはるかに大変だからです。海外はマーケットは大きいものの競争も厳しい。生半可な気持ちで成功できるものではありません。

お客さまに対していいものを提供して喜んでいただくということがビジネスの基本です。海外でもそれは同じです。ただ、そう考えたとき、おのずとM&Aが選択肢になるはずです。いくら自社の製品を海外のお客さまに提供し喜んでいただきたいと考えても、日本の感覚ではニーズを把握できませんし、販路もありません。すでにお客さまをつかんでいる企業を買収し、その会社の製品を提供すればいいのです。そうすれば、買われた会社も伸び、従業員もお客さまもハッピーになります。

M&Aを行うなら、そのようになることを目指すべきです。中途半端な気持ちでM&Aを行い、その国で育ってきた会社をつぶしてしまった事例を私はいくつも見てきました。

それは日本人として恥ずかしいことですし、そのようなM&Aであれば、やらないほうがいいと思います。

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M&Aの失敗 ほとんどは経営の失敗

「日本企業のM&Aは失敗例が多い」と聞くことがありますが、私はそうは思いません。これまでM&A案件をたくさん見てきましたが、90%は成功だと見ています。

失敗を何と比較するかの問題だと思います。私は、M&Aが失敗か成功かは、「M&Aをやらなかったらどうだったか」と比較するべきだと考えています。

それにもかかわらず、「買った会社がよくなかった」「M&Aのプロセスがよくなかった」などと買収後の業績不振の矛先を、買収対象企業に向けがちです。しかしその要因はほとんど中にあります。それを失敗と言うなら、「M&Aの失敗」ではなくて、「経営の失敗」なのです。

ただ、オーナー経営者の方には釈迦に説法ですが、経営とは失敗の連続です。毎日失敗しているようなものです。失敗することが企業の仕事といってもいいほどです。成功するために失敗をするわけですから失敗を恐れてはいられません。M&Aも同じです。成功のための失敗だったら意義があるのです。

またM&Aは、異文化・異分子を統合する作業です。驚きの連続です。それを楽しいと思えるなら、M&Aは成功します。

そのような人は経営にも成功しているのです。課題を楽しいと思えない経営者は企業を成長させることはできません。

変化を許容し楽しむ、それが経営者の器ではないかと私はいつも思っています。器が小さいと自分の会社も経営できないし、M&Aを行ってまったく違う異分子の才能を引き出すことはできないと思うのです。

売るも買うも同じ 肝要なのは成長戦略

日本でM&Aというと、会社を買うのはまだしも、売ることに対してはネガティブな捉え方をしがちです。従業員も「身売り」「切り捨て」といったイメージを抱きやすい傾向がありますが、それは違うと思います。事業を伸ばそうという点では買うのも売るのも同じなのです。

M&Aによって自社にとって必要な事業を買い、自社では成長させることができなくなった事業をより生かせる企業に売却する。

これは企業の新陳代謝として必要なことです。私は常に、自社の経営リソースだけで事業を伸ばせるのか、他社の経営資源をM&Aで獲得したほうが伸びるのではないかと考えながら経営に携わっています。

GCA
代表取締役CEO
渡辺章博(わたなべ・あきひろ)
1959年、東京都生まれ。80年中央大学商学部在学中に公認会計士第二次試験に合格。82年単身米国に渡りKPMGニューヨーク事務所にて日本企業の米国進出のためのM&A業務に従事。2004年4月「For Client's Best Interest」という経営理念を掲げGCAを創業。米国・日本公認会計士。

われわれGCAは、多くのオーナー経営者の悩みを聞く中で、事業承継がオーナー経営者の非常に大きな悩みであることをよく知っています。

しかし、事業承継も、こうしたM&A戦略の発想で考えるべき課題の一つではないでしょうか。

日本はシュリンクするから、あるいは継ぐ人がいないから売るというのでは、あまりにも後ろ向きです。

そうなる前に、自社の成長のために他社を買収し、成長したら売却するといった、M&A戦略の中で考えるべきです。「赤字事業を売却したい」という相談をよく受けますが、赤字になって、追い込まれてするものは「売却」ではなく、いわば撤退です。そうなる前に売却すべきです。

戦場でも、追い込まれてからの撤退は、自陣の被害を大きくします。しかし、戦略的撤退であればいったん引き下がって立て直しが効きますから、次につながります。

オーナー経営者であれば、5年先、10年先のことを考えて、その事業が将来どうなっていくのか、自分の経営、自社の経営資源の中でどう大きくできるのかを常に自問して経営に臨まなければなりません。そして、その決断に基づいて機動的にM&Aを活用するのです。

ただし、ファミリー経営のような企業の場合には、そこに家族の問題や相続の問題などが出てくるため、問題が複雑になります。

それが判断を遅らせることになり、どうしても追い込まれ型の事業売却になりがちです。

しかし、その場合でも将来のことを考えて、前向きな成長プランの中で、買い手を選択して売却するというのが理想だと思っています。

そのためには、自社の事業を最も成長させてくれる最適な買い手を、売り手の最善の利益を考えて探し出してくれるアドバイザーが必要です。

GCAは「For Client's Best Interest」という経営理念を掲げ、30年までに世界一のM&Aアドバイザリー企業になることを目標に掲げています。グローバルレベルで最適なパートナーを探せる体制をつくることで、オーナー経営者のお役に立ちたいからです。

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