REIT(不動産投資信託)の値動きを示す東証REIT指数は、昨年6月初めに約2600ポイントまで上昇した後に下落に転じ、現在は1200ポイント前後で推移している。筆者は、合理的に説明できる水準は1800ポイント程度と考えている。ここまで低下したのはなぜか。

第1の理由は、不動産市場に対する不安である。地価上昇の減速、オフィス空室率の上昇、マンション販売の低迷など、不動産市場の不調を示すデータは大変に多い。ただし、REITは有望な物件を厳選して運用し、不動産市場が全体的に冷え込むなかで、ほとんどが増収・増益を続けている。

第2の理由は、不動産会社の信用力低下である。最近数カ月間に、スルガコーポレーション、ゼファー、アーバンコーポレイションなど、不動産会社の経営破綻が相次いだ。金融機関が不動産業への融資に慎重になったため、資金繰りが悪化して経営破綻に至る例が多い。現在、経営が不安視されている会社には、REITのスポンサー企業(設立母体)も含まれている。

このような「貸し渋り」には、政策面での対応が図られている。政府が8月29日にまとめた「緊急総合対策」には、不動産会社を含む中小企業等への支援策が盛り込まれた。また、9月2日には、金融庁が金融機関に対して、融資の円滑化を要請している。

不動産業界の再編も本格化しつつある。9月8日には、ジョイント・コーポレーションがオリックスからの出資を受け入れることを公表した。同社が組成したジョイント・リート投資法人は、資金調達ができないため不動産購入を断念するなどの問題が表面化している。しかし、スポンサー企業の信用力が向上すれば、REITに対する投資家の評価も回復してくる可能性がある。

8月下旬頃から、国内金融機関などが、9月末の決算を控えて、株価が大幅に低下した銘柄のロス・カット(損失確定のための売却)を進める動きが出ている。しかし、この動きは9月中旬までに一段落すると予想される。

現在、REITの配当利回りは全銘柄の平均で5%以上に上昇し、大変に魅力的な商品になっている。そして、REIT価格の上昇を阻む要因は、徐々に少なくなりつつあるようだ。