問われる事業を抜本的に変える自己変革

4.デジタル化の必要性

これらの変化に直面して、企業が従来通りであることに固執していては取り残されてしまう。事業の行い方を抜本的に変える自己変革に取り組むことが求められる。特に、日本の得意とするモノづくりという分野において優位性は相対的に低下する。製造業といえども製造のみでは勝てなくなる。モノづくりの効率性は格段に向上して新興国企業のキャッチアップも容易になり、同質的な競争のままではマージンは縮小してしまう。

このため製造業は下流に進出して小売り(ダイレクトチャネルなど)まで一貫して行うか、サービス化するなどしなければ競争優位を保てなくなる。いずれにしても、消費者や顧客と直接対面し、そのニーズを理解し対応するという意味で従来型の製造業のあり方とは根本的に異なる。企業のあり方、マインド、行動から全てが変化する必要に迫られるのである。

一方で、有望なブランドが自社で小売りまで手掛け始めた場合、既存の小売業にとっての脅威となる。小売りとしての目利き力や販売現場でのおもてなしによるブランドの創出や向上なくしては、ブランドの強いメーカーの小売業に勝てない。これは既にアパレルや家具で現実となっている。

主にデジタルによって変化する顧客、消費者、市場にデジタルで対応することは、外的な環境変化の受動的な反応というだけではなく、技術革新を活用して能動的に自ら変革する機会という意味でもある。デジタル化の意味をはき違え、横並び、あるいは後追いの姿勢に甘んじていては、デジタル化は望むことはできない。

※CDOサーベイ(グローバル)は、以下の手法により調査を実施
ブルムバーグのデータに基づく2016年7月1日現在で全世界の時価総額トップ2,500社のCDOの有無、バックグラウンドなどの分析(2015年までは1,500社を対象としていたものを拡大)。CDOの有無を調査するために、企業役員データベース(Avention、BoardEx)、記者発表(Factiva)、各社ホームページ、ビジネス向けSNS(LikedIn、Xing)その他のインターネット調査を実施
※CDOサーベイ(日本)は、以下の手法により調査を実施
インターネット調査:従業員500人以上の企業の部長職以上2,423名を対象にスクリーニング調査、自社はデジタル化を推進しているとした、従業員500人以上の企業の部長職以上300名に対して本調査を実施。調査期間2016年11月
インタビュー調査:特徴的なデジタル化の取り組みを行っている企業(10社程度)のデジタル化推進責任者に対するインタビュー調査。調査期間2016年12月~2017年1月

唐木明子(からき・あきこ)
PwCコンサルティング合同会社 ストラテジーコンサルティング(Strategy&)パートナー
東京大学法学部卒業、コロンビア大学ロースクール修了(LL.M)。外資証券会社にて社内弁護士として東京・ニューヨークで勤務。マッキンゼー・アンド・カンパニー、金融機関を経て、Strategy& 東京オフィスのパートナー(現職)。国内外のリテール、金融サービス業、ヘルスケア、その他分野のクライアントと、新規事業や商品・マーケティング戦略に伴う成長戦略等のテーマについて、多様なコンサルティングプロジェクトを手がける。また、CDOリサーチのスペシャリストでもある。日本企業の成長戦略実現に必要なダイバーシティの推進にも取り組んでいる。現在、ロンドンオフィスへ出向中。