貼り薬型の認知症薬のメリット

長い間、認知症の薬にはドネペジルだけが使われており、ほかの選択肢がなかったが、11年から新しく3つの薬が使用可能になった。それがリバスチグミンとガランタミン、そしてメマンチンである。

「リバスチグミンとガランタミンは、基本的にドネペジルと同じ作用です。ただリバスチグミンは貼り薬として使う点が特徴。認知症患者は自分が薬を飲んだかどうか、わからなくなってしまうことが多い。その点、貼り薬は表面に使用日などが記入でき、管理しやすいという大きなメリット、一方で肌が荒れやすいというデメリットがあります」(同)

ドネペジルとは作用が異なるのが、メマンチン。最新の仮説によると、認知症患者の脳では神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に働いており、頭のなかが異常にザワザワしている。そこでグルタミン酸の働きを抑制し、認知能力を高めようとする薬が、メマンチンだ。

「理解しておいてほしいのは、副作用がない薬は体に作用していないということ。つまりどんな薬にも副作用があるんです。これらの薬も例外ではなく、ある程度の確率で吐き気、下痢、便秘など、消化器症状が出ます。摂取する場合、少量から始めて、少しずつ増やしていくようにしましょう」(同)

認知症に用いられるおもな薬
▼ドネペジル

脳内の神経伝達物質アセチルコリンの働きを高め、脳の活動を活発にする。特に初期の認知症によく効き、日常生活が支障なく送れるようになることも。よく利用される「アリセプト(R)」も作用は同じ。
▼ガランタミン
販売名は「レミニール(R)」。植物の球根から取れた化合物からできた薬で、1950年代から医薬品として研究されていた。2000年ごろから世界中でアルツハイマー型認知症の治療に使われている。
▼リバスチグミン
販売名は「リバスタッチパッチ(R)」または「イクセロンパッチ(R)」。貼り薬タイプは、本人が寝ていても介護者が貼ることができる、副作用が少なく、出たとしてもすぐはがせるなど、比較的管理しやすい。
▼メマンチン
販売名は「メマリー(R)」。もともとドイツでつくられた薬で、日本では第一三共が販売している。ヨーロッパでは02年に、アメリカでは03年に承認。日本でも認可を求める声が高まり、11年に認可された。
阿部和穂
1963年生まれ。武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳と薬。近著に『認知症 いま本当に知りたいこと101』(武蔵野大学出版会)
 
(撮影=金子山 写真=iStock.com)
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