1000円のラーメンに内容は伴っているのか

「ここまで技術の粋を凝らし、些細な欠点すら見当たらないラーメンが900円で食べられるなんて。1000円のままでも良かったのではないですか」と正直な感想を口にすると、「いえいえ、具材の分量を減らしましたので、900円で何とかなります」と大西店主。

「そもそも、今、1000円で提供されているラーメンで、内容が価格に伴っているものがどれだけありますか。ラーメンが丼ひとつで完結する料理である以上、内容をどれだけ吟味しても価格が1000円を上回ることはまずありませんよ」

もしかすると、大西店主のこの実直な人柄こそが、人を惹きつけてやまない1杯を創り出すことができる最大の要因なのかもしれない。

特に印象に残った大西氏の言葉がある。

「一般的に、目標は遠大で高邁(こうまい)なものの方が素晴らしいと考えられがちですが、今そこにある身近な目標を確実に達成していく方が大切な場合もあると、私は思うんです。遠い目標ばかりを見据えているうちに、進むべき道を見失ってしまうこともありますから」

確かに大西氏は、目の前にあるラーメンをひたすら磨き上げ続けることで、道を切り拓いてきた。日々の地道な研究と努力の過程で、ミシュランが☆を与え、世界進出への道が拓けた。彼が口にするからこそ深い説得力を持つ言葉だ。

田中一明(たなか・かずあき)
ラーメン官僚
1972年生まれ。兵庫県出身。通称・ラーメン官僚。大学在学時の95年より、ラーメンの食べ歩きを始める。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条のもと、年間700杯以上を食べ続ける。
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