生前退位の恒久化や皇室典範改正を無視

戦後70年にあたる15年1月の「ご感想」では、日本人のほとんどが忘れかけていることにまで言及したのだ。

「この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切だと思っています」

こうした発言を見ていけば、改憲には反対という姿勢が明確になる。それに反発している安倍官邸は、「おことば」で触れられている生前退位の恒久化や皇室典範改正を無視した。

安倍自民党の改憲草案では、天皇を「日本国の元首」としているが、内田にいわせれば、絶対的存在にして、「それと同時に国民から隔離して、その意思を伝える手立てを奪」い、傀儡として操作し、何をすべきかを決めるのは天皇ではなく、天皇へアクセスできる少数の者たちで、戦前のような「独裁制」をつくろうとしていると喝破する。

「陛下をトランプさんに会わせていいものか」

『週刊新潮』(11月30日号)は、9月に「皇后の乱」があったと報じている。

トランプ米大統領が来日した際、皇居に招かれて天皇皇后両陛下に会ったが、その調整が行われていた9月頭ごろ、美智子皇后が「陛下をトランプさんに会わせていいものか」という懸念を周囲に漏らしていたというのだ。

トランプ信奉者の安倍は、そんな話が今頃になって流れることに、「面白くない」と憤っていると新潮は報じている。

トランプと並んで写真を撮られ、その会話の中身や写真をツイートされ、「日本のエンペラーに会ったぜ! グレイト」などと書かれるのが心配だったようだ。

だが、トランプは国賓扱いではなく、公式実務訪問賓客という扱いになったので、宮中晩餐会を催し、両陛下がトランプと席を一緒にすることはなく、美智子皇后の心配は杞憂(きゆう)に終わった。

まだまだ天皇皇后と宮内庁VS.安倍首相という「犬猿の仲」は予断を許さないようだ。宮内庁関係者がこう語っている。

「陛下ご自身、『皇室の安定的な存続』や『象徴天皇のあり方』に頭を悩まされてきました。そこから、女性宮家創設や生前退位について前向きに検討するよう、折に触れて官邸へ“ボール”を投げて来られたのですが、安倍政権はそれを喫緊の課題と受け止めることはなかった」