突出したクセがなく「食べ飽きない」

テレビCMでもおなじみの「バーモントカレー」は、1963年発売のロングセラー商品だ。消費者の好みが多様化し、競合が次々に参入する現在、発売半世紀を超えた商品のシェアが30%超というのが、いかにすごい数字か理解できるだろう。

なぜ長年にわたり、「ここまで愛される」のか。

「バーモントカレーには、突出したクセがありません。だから消費者は食べ飽きないのだと思います。カレーライスに使うカレールウには、色・とろみ・溶けやすさ・香りなどが求められます。バーモントカレーのカレーパウダーは20~30種類のスパイスから構成されており、これが味の決め手となります『リンゴとハチミツ』が特徴のバーモントカレーは甘みの後にカレー感が広がります。その感じ方が他のカレーにないのも特徴です」(船越氏)

子どもから大人まで、一緒に食べられるのがバーモントカレーの特徴だ。(画像提供:ハウス食品)

子供から大人まで一緒に食べられるのは、商品紹介のCMで訴求するとおりだ。長年にわたり「甘口」「中辛」「辛口」をそろえるが、リンゴとハチミツのブランドイメージを大切にして、決して激辛にはしない。売れゆきは中辛・甘口・辛口の順だという。

「バーモントカレーは、辛口でも辛さの5段階評価では3番目。当社が手がける『ジャワカレー』の甘口と辛味順位は同じです」(同)

戦後に家庭に浸透した「カレー」

家庭用カレーの歴史において、バーモントカレー」はエポックメーキングとなった商品だ。日本の生活文化とも関連するので、この機会にカレーの歴史を簡単に紹介しよう。

日本にカレーが紹介されたのは明治維新、文明開化の頃。当初は洋食屋で食べるごちそうだった。それが大衆化路線に進んだのは、戦争が関係している。大量に作れて栄養バランスもよく、腹持ちもよいカレーは、軍隊(特に海軍)の日常食として重宝された。そして戦争が終わり復員した元兵士たちによって、各家庭に入り込んでいく。昭和20年代半ばを過ぎ、徐々に世の中が落ち着いてくると、カレー業界の争いは激化。ヱスビー食品(東京)、グリコ(大阪)、ハウス食品(大阪)、オリエンタル(名古屋)の各社を中心に商品を展開していた。